慶應義塾大学は2018年3月27日、金属をベースとしたスピントロニクス素子の機能を、有機分子により制御する新原理を明らかにしたと発表した。
スピントロニクス技術は電子の電気的性質(電荷)の流れである電流に加え、電子の持つ磁気的性質(スピン)を利用する。最近では電流と電子のスピンの流れ(スピン流)の変換に、スピン軌道相互作用を用いる方法が注目されている。しかし、これを外部から制御することは困難だった。
同大学理工学部物理情報工学科の中山裕康特任助教をはじめとする研究グループは、金属をベースとしたスピントロニクス素子としてビスマスと銀の接合、さらに磁性体を含む素子を使用。電流とスピン流の変換現象を測定した。その後、この素子の表面に有機分子を自己組織化形成したところ、変換効率の増大や減少に成功した。
この結果は、素子表面への有機分子の形成によって、ビスマスと銀のスピン軌道相互作用が変化したことによるものだと同グループは解明。さらに、光の照射で構造を変える有機分子を用いることで、変換効率を光学的に制御することも可能だということも示した。
半導体素子では、スピン軌道相互作用の強さを外部から制御する手法が確立されている。相互作用が100倍近く大きい金属素子でも制御可能であることを明らかにしたのは、同研究が初めてとなった。