指の静脈を利用する3D生体認証技術を開発

ニューヨーク州立大学バッファロー校は、指静脈の3D画像を使用する新しい生体認証技術を開発した。研究成果は、『Applied Optics』誌に2020年9月28日付で公開されている。

指紋や顔など解剖学的特徴を利用して個人を認識する生体認証は、スマートフォンや法執行システムなど幅広い場面で利用されている。特に、指の静脈を使用する方法は、指紋や顔と比べてプライバシーの侵害や加齢、摩耗による変化などの問題を回避できるという利点がある。ただ、これまでの指静脈を使用した生体認証技術は2D画像に基づいており、3D画像を活用できれば、立体的な識別が可能となりセキュリティのさらなる向上が期待できる。

今回研究チームは、光と音を組み合わせたイメージング技術である「光音響トモグラフィー」
を利用して、指静脈の3D生体認証技術を開発した。光音響トモグラフィーは、レーザー光を指に照射した際に光が静脈に当たって発生する音を超音波検出器で検出し、静脈の3D画像を得る方法だ。

今回の開発では、光の照射と音響検出をより良く統合するために、新しい光ビームと音響ビームのコンバイナを作製した。また、指紋スキャナのように、手を自然な形でスキャンプラットフォーム上に置くことができる撮影窓を設計。さらに、3次元空間における生体認証と解剖学的特徴のマッチングを可能にする、新しいマッチングアルゴリズムを開発した。

36人の被験者を対象に新しい生体認証技術をテストしたところ、99%の精度で身元を正しく判断した。認証に使用する指が多いほど、精度は高まった。

研究チームは、銀行や軍事基地など高度なセキュリティが求められる施設での利用を想定しているが、今後小型化することで個人の電子機器にも利用可能だとしている。現在、システムのさらなる小型化と、撮影時間の1秒未満への短縮に取り組んでいる。さらに光音響システムをスマートフォンに組み込むことで、リアルタイムで生体認証を行うポータブルシステムやウェアラブルシステムが実現できる可能性がある。

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