電子デバイスの熱を放散する積層グラファイトフィルムを開発

サウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学の研究チームは、電子機器の放熱に使用できるグラファイトシートを、効率的かつ迅速に作製する技術を開発した。研究の詳細は、『Scientific Reports』誌に2020年9月7日付で公開されている。

電子部品から発生する熱を放散するために高品質のマイクロメートル厚グラファイトシートが使われる場合がある。しかし、一般的に用いられるポリマーを原料とする方法は、最高温度3200℃の多段階プロセスが必要で、工業的な製造においてコストが高いという課題がある。

今回研究チームは、触媒として機能するニッケル表面において、高温のメタンガスをグラファイトに変換する化学気相成長法(CVD)を用いて、ニッケル薄膜上にナノメートル厚のグラファイト(NGF)を成長させた。NGFはニッケルの両面で成長し、他の基板への転写にポリマーを必要としない。反応温度900℃、5分間の反応で、厚さ100nm、面積55cm2に達した。平均的な厚さは市販のマイクロメートル厚のグラファイトシートと単層グラフェンの中間にあたるもので、その柔軟性から折りたたみ式スマートフォンの熱管理にも利用できるという。

また透過型電子顕微鏡による観察から、両面のNGFは物理的特性や表面の粗さなどの特性が異なっていることが明らかとなった。さらに、NGFは部分的にわずか2〜3個の炭素からなる厚さの領域があった。この領域のおかげで、NGFは全体として紫外〜可視光透過率62%と半透明性を示した。

NGFはその特徴から、放熱以外への応用も期待できる。粗い裏側NGFはNO2センシングに適しており、滑らかで通電性が高い表側は太陽電池の通電チャネルや対極へ利用できる。

関連リンク

Semi-transparent graphite films growth on Ni and their double-sided polymer-free transfer

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