- 2020-12-9
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- 3Dプリンター, Cell Reports Physical Science, Frédérick Gosselin, plastic webbing, ポリカーボネート, モントリオール理工科大学, 犠牲リンク(sacrificial link), 繊維, 蜘蛛の糸
カナダのモントリオール理工科大学は、3Dプリンターで作った繊維で衝撃エネルギーの96%を吸収できることを実証した。これによって、スマートフォン用の透明な高耐衝撃プラスチックカバー開発へ道が開けるとしている。
同学の研究チームは、蜘蛛の糸の優れた機械的特性に着目し、蜘蛛の巣状に編まれたプラスチック(plastic webbing)をガラス板に埋め込んで、衝撃で粉々にならないようにする方法を探していた。機械工学のFrédérick Gosselin教授によれば、 「蜘蛛の巣は、絹タンパク質自体の中で分子レベルの犠牲リンク(sacrificial link)によって変形する能力があるため、昆虫が衝突する衝撃に耐えることができる」という。
研究チームは、3Dプリンターを使い熱可塑性プラスチックの一種であるポリカーボネートで、太さ2mm未満の繊維を「織り」上げた。3Dプリンターによってゆっくりと押し出されて繊維を形成すると、溶融プラスチックは輪を作り、最終的に一連のループを形成する。
「硬化すると、これらのループは犠牲リンクに変わり、繊維の強度を増加させる。衝撃が発生すると、これらの犠牲リンクがエネルギーを吸収して壊れ、繊維の全体的な完全性を維持する。これは絹タンパク質と同じだ」と、Gosselin教授は説明する。
研究チームは、透明なプラスチック板に一連の蜘蛛の巣を埋め込んで、衝撃試験を行ったところ、プラスチック板は壊れることなく衝撃エネルギーの最大96%を分散させた。プラスチック板は、ひびが入る代わりに、特定の場所で変形し、全体的な完全性を維持した。詳細は、『Cell Reports Physical Science』誌に掲載されている。
Gosselin教授によると、この自然界からヒントを得た新技術は、新しいタイプの防弾ガラスの製造や、より耐久性のあるプラスチック製の保護スクリーンの製造につながる可能性があるという。Gosselin教授はまた、航空機エンジンの保護コーティングとして航空工学でも使用できるとも述べている。
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