- 2021-1-3
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- AZdecrypt, David Oranchak, Jarl Van Eycke, Sam Blake, San Francisco Chronicle, Z340(340暗号文), ゾディアック・キラー
民間人3名の暗号解読チームは、2020年12月11日、51年前に連続殺人犯「ゾディアック・キラー」からアメリカの日刊紙San Francisco Chronicle宛てに送られた暗号文の解読に成功したと発表した。
ゾディアック事件とは、1968年から1969年にカリフォルニア州サンフランシスコ市内で少なくとも5人が殺害された未解決連続殺人事件のことだ。1974年には、犯人から37人殺害したことを示唆する手紙が届いている。
今回解読された暗号文は、1969年11月に届いた340個の記号から成る「Z340(340暗号文)」と呼ばれるものだ。この暗号文を解いたのは、オーストラリア在住の応用数学者Sam Blake氏、ベルギー在住の物流倉庫従業員でプログラマーのJarl Van Eycke氏、アメリカ在住のDavid Oranchak氏の3名だ。何カ月も解読を試みた後、2020年12月3日に重要な発見をし、同月5日までに暗号の解読を終えて、解読結果をFBIに送ったという。
最初に、Blake氏が、暗号文に対し65万通り以上の並べ替え処理を行った。そして、Eycke氏がこの暗号を解くために開発した暗号解読ソフト「AZdecrypt」に、Oranchak氏が一連の処理済みテキストを入力して実行。その出力結果を見ていくうちに、有力な解読方法が見い出された。
まず、暗号文を9行、9行、2行の3つに分ける。左上の角から始めて、下へ1つ、右へ2つ進むというルールで、対角線の方向へと1つずつ記号を拾っていく。対角線の端に達したら、反対側の端に飛び、同様に続けていく。それだけでは解読できなかったが、AZdecryptで、既に判明している語を特定の位置でロックして残りの鍵を探していく「crib」機能を併用したところ、意味の通る文章が現れた。
解読された文には、「私はガス室を恐れていない」「なぜなら私をすぐにでも楽園(paradice)へと送ってくれるからだ」という表現があった。この暗号が届いたのは1969年11月8日。ゾディアックを名乗る人物が電話でテレビ番組に登場してから約2週間後のことだった。その人物は「ガス室には行きたくない」と話していたことから、解読された文の内容は、その後に真の犯人であるゾディアック自身が言いそうなことであり、「正しい方向をいっているに違いない」と思ったという。また、解読結果に「paradice」という単語が出てきており、これは正しくは「paradise」とつづる単語だが、ゾディアックが複数回、手紙で「paradice」と書いていたことからも、暗号文を解読できたと考えるにいたったようだ。
FBIサンフランシスコ支局は、2020年12月12日に、この暗号を民間人が解読したことは把握しているとの声明文画像を公式Twitterアカウントでツイートしている。