重なり合う層の向きを変化させて材料から放出される光の強度と色を制御する新手法――単層だけでなくバルク状でも可能に

Image courtesy of the Singapore-MIT Alliance for Research and Technology.

積層された薄膜同士の重なる向き(ツイスト角)を変化させることで、材料の光学特性を室温でも調整できる新しい手法が発見された。この研究は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)とシンガポールの共同研究機関であるSingapore-MIT Alliance for Research and Technology(SMART)が、MITおよびシンガポール国立大学(NUS)と共同で行ったもので、2021年2月16日付で『Nano Letters』オンライン版に掲載された。

材料特性の制御は、太陽電池パネル、コンピューター、スマートカー、病院の救命器具など、多くの現代技術を支える原動力となっている。しかし、材料特性は、従来、その組成や構造、時には大きさに基づいて調整されていた。また、発光する実用的なデバイスのほとんどは、組成の異なる材料の層を使用しており、光を増大させることが困難な場合が多い。

一方、原子レベルの薄さの物質から成る層を、それぞれの向きを変えるツイスト角で重ねると、モアレ超格子と呼ばれる構造が形成され、これまでにない超伝導など新しい物理現象がいくつも発見されている。このような、2次元材料の層間の角度が電気的特性をどのように変化させるかについて研究する分野を「ツイストロニクス」と呼ぶ。

これまでツイストロニクス分野では、個々の単層を積み重ねることに重点が置かれてきた。その場合、慎重に剥離する必要があり、また、ねじれ状態からの緩和に苦労する可能性があるため、実用化は難しかった。

今回の発見によって、この画期的なねじれ関連現象が、操作が容易で工業的にも有要な厚膜システムにも応用できるようになるかもしれない。

今回の実験では、厚さ100nm超である3次元バルク状の六方晶窒化ホウ素(hBN)の光学特性を、室温でも調整できることが分かった。これは2次元系でモアレ超格子形成に至るのと同じ現象だ。積層された厚いhBN膜の光の強度と色の両方を相対的なツイスト角によって連続して調整でき、強度は40倍以上になった。

この研究は、ツイストロニクス分野の基礎物理学を発展させる上でも意義深いものであるとともに、特に医学、環境技術や情報技術への応用に向けて、従来、使用されてきた構造を超越した薄膜の光学特性を制御する新たな方法を開くものだ。

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