”透明な木材”の窓、ガラスよりも自然採光と断熱性に優れることが判明

メリーランド大学工学部の研究チームが、“透明な木材”を開発した。その透明性木材で作られた窓が、自然採光と断熱効果の点でガラス窓よりも優れていることも明らかにしている。研究の詳細は、専門誌『Advanced Energy Materials』に8月11日からオンライン公開されている。

同研究チームが開発した透明性木材は、天然の木に備わる細胞構造をすべて保持。天然の道管を利用して、太陽光を木材内に導く。透過する光はガラスよりもわずかに少ないが、通す熱はガラスよりもはるかに少ない。

研究論文の主執筆者であるTian Li氏は、「木材内の道管は、可視光線と同程度の波長範囲をもつ光線を透過するが、主に熱を伝える波長範囲は遮る」と語っている。

研究チームは今回、透明性木材パネルを天井に取り付けた小さなモデルハウスを建築し、透明性木材の自然採光力を検証。その結果、透明性木材パネルが天井に付けられた家では、天井にガラスを取り付けた場合よりも均一に光が届くことが判明した。

木材内の道管は、材料中の可視光線を真っ直ぐに通すが、残存している細胞構造がほんの少し光を周囲に散乱する。これは、もや現象と呼ばれる効果だ。光は人の目の中に直接入るのではなく、快適な明るさを間接的にもたらす。

太陽光がガラス窓を通って家に差し込む場合、ガラスを通って差し込む光線の角度は太陽の動きとともに変化する。一方、透明性木材で作られた窓の場合は、太陽の位置が変化しても、木材内の道管が太陽光を常に同じ方向に導く。

「これはつまり、あなたの家にいる猫は数分おきに心地よい陽だまりを求めて起き上がり、移動する必要がなくなるということ。太陽光は同じ場所に留まることになる。室内は常に均等に採光できる」と、Li氏は説明している。

最近、研究チームは透明性木材の製造工程の特許を出願した。工程は、木材を茶色に着色して強化する成分であるリグニンを全て漂白するところから始まる。次に、木材をエポキシに浸し、強度を回復するとともに、木材をきれいにする。

研究チームは2×2cmのシナノキの木材を使用しているが、どんなサイズでも原料として使用可能だ。彼らの開発した透明性木材は、ポリマー成分によって防水加工されており、また内部の細胞構造に耐衝撃性があるため、ガラスよりもはるかに壊れにくい。

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