アイオワ州立大学の研究チームが、綿花の枝葉を模倣した風力発電デバイスのプロトタイプを作製した。このデバイスは、人工の葉が風に吹かれたときに生じるピエゾ圧電効果で発電する仕組みだ。風力タービンを代替するほどではないが、家電製品を充電するのには十分役立つくらいの発電能力を備える可能性がある。
デバイスの設計を指導したMcCloskey准教授によると、ラスベガスのような都市部における携帯電話の中継タワーは、美しく見せ掛けるためだけに、葉に覆われた樹木のように偽装されている。このような葉からエネルギーを取り出せれば、都市や住宅地域の景観とマッチする樹木のような発電機として活用することが可能だ。「何か植物に似たものから電力を生み出すことはできないかという問い掛けから、私たちの研究はスタートした」とMcCloskey准教授は語っている。
研究グループが作製した風力発電デバイスは金属製の格子になっていて、綿花の葉の形をした多数のプラスチック製のフラップが垂れ下がっている。そして、葉柄を模倣した部分の中には特殊な樹脂製の紐があり、この紐が風の動きで曲がるとピエゾ圧電効果によって電力が発生する。綿花の葉をモデルとしたのは、葉柄が平たいがために葉を一定の方向に振動させ、発電量を最適化できるからだ。
ピエゾ圧電効果とは、水晶や特定のセラミックに圧力をかけると、圧力に比例して分極し、表面電荷を通じて電圧を発生する現象だ。これを利用した身近な例としては、ライターやガスコンロの点火のほか、ソナーやスピーカーなどがある。高分子でも曲げにより、水晶より数段高い圧電効果を示すものが知られている。
論文の共著者でISUの研究助手であるCurtis Mosher氏は、このプロトタイプの実用化に向けて、数万個の葉を付けた人工の木を製作するのは、それほど大変ではないという。研究チームは将来像として、この人工の樹木により家電製品に電力を供給できる新しいニッチ市場を考えている。
だが、ISUの研究で使われたピエゾ圧電効果では、市場で競争するのに必要な効率を達成できなかった。次のステップに進むには新しい手法が必要となる。「競争力のある実用的なデバイスを製作するには、さらに研究が必要だ」とMcCloskey准教授は語っている。
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