- 2023-5-26
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- FDA(アメリカ食品医薬品局), ものづくり, エリアデザイナー, エンジニア, サービス業, バリデーション, プロセス開発, 株式会社メイテックフィルダーズ
株式会社メイテックフィルダーズは、ものづくりの要となる設計・開発から、試験・評価・解析、生産技術、品質保証、フィールドエンジニアリングの領域に、プロフェッショナルなエンジニアによる派遣サービスを提供している企業だ。
志村 朋之氏は工業高校を卒業後、派遣会社に就職してエンジニアとして約10年の業務を経験した後、メイテックフィルダーズへ転職した。「エンジニアとして成長したい」という意志を持って、再び派遣という働き方を選んだ形だ。派遣で働くエンジニアは「サービス業だ」と話す志村氏にとって、派遣という働き方、そしてメイテックフィルダーズのどのような点が魅力に映っているのだろうか。(執筆:畑邊康浩、撮影:編集部)
──志村さんは工業高校のご出身ですが、その頃からエンジニアになろうと思っていたのでしょうか?
[志村氏]その頃は「エンジニアになりたい」とは考えておらず、就職に有利だろうという程度の気持ちで地元の工業高校の機械科へ進学を決めました。父が自動車関係の仕事をしていたので、その影響もあったとは思います。
エンジニアになることを意識したのは就職活動の時です。それまでは、エンジニアになるのは大卒者というイメージがあり、漠然と工場の仕事に就くものだと思っていました。でも就職先を探しているうちに、工業高校卒から派遣という形でエンジニアとして働く道があることを知りました。「通用しなかったら辞めて再チャレンジすればいい」という気持ちで派遣会社を受けて、今いるメイテックフィルダーズとは別の会社に就職しました。1997年のことで、そこが私のエンジニア人生の始まりです。
──最初はどのような仕事をされましたか?
[志村氏]最初の配属先は時計メーカーでした。部品の金属加工の製造技術担当で、補助的な業務からのスタートでしたが、カム式旋盤の治具設計を行いました。社会人になって最初の仕事でしたので、そもそも何をすればいいのか分からず、言われたことだけをやっていたように思います。ただ、業務自体は興味を持って取り組めました。製造現場が近かったことから、部品が組みあがる工程を見たり、自分が設計した治具がどう使われているのかを確認できたのは良い経験になりました。
この仕事を5年ほど続けた後、同じ会社の別事業部に異動することになりました。そこでの業務は液晶パネルのマスクパターン設計で、前の金属加工とは全く違う樹脂の知識を必要とするものでした。社外との折衝業務を経験したのもこの時期です。ここで、私のエンジニアとして一番大事な基礎の部分を教えてくれた方に出会いました。
──その方からどのようなことを教わったのですか?
[志村氏]その方は派遣先企業の上司で、「自分でものごとを考え、自分の意見を伝えること」の大切さを教えていただきました。ある時、取引先からの納品物の品質に問題があり、それに対して再発防止策を提案されたのですが、それが品質を担保する上で本当に妥当な策かどうかを考えるよう、その上司から指示されました。
「多分大丈夫だろう」という考えで提案を受け入れるわけにはいきませんから、妥当性の根拠を上司に示さなければなりません。初めての業務では言われた仕事をやることが多かったのですが、この時に自分で考え抜くことを指導してもらったことで、ロジカルに考え、相手に納得してもらうための説明の大切さを知ることができました。同時に、「自分で考えることの楽しさ」にも気付くことができたのです。エンジニアとして少し成長できた、私のキャリアにおける1つのターニングポイントですね。
知識不足を痛感し、メイテックフィルダーズへ転職
──その配属先を最後に転職されていますね。どのような背景があったのでしょうか。
[志村氏]契約期間の終わりと共に、エンジニアとしての知識の足りなさを痛感したことがきっかけでした。この配属先でエンジニアとしての目を開いてくれた上司に出会い、エンジニアの仕事が好きになりました。しかし、このまま今の会社にいて、エンジニアとして成長できるのか疑問に思い、転職を考え始めました。
──メイテックフィルダーズを転職先に選んだ理由を教えてください。
[志村氏]これまでの職場にはメイテックのエンジニアの方がいて、一緒に仕事をしていたので、メイテックグループのことは知っていました。メイテックのエンジニアは、技術力が高く、良く相談にのっていただきました。実を言うと、私のパートナーがメイテックの社員なんです。
そのつながりで、最初メイテックの採用面接を受けましたが、エンジニアとしての業務経験が浅かったことから、結果は不採用でした。でもその時に、面接を担当してくれた方からグループ会社のメイテックフィルダーズを紹介していただきまして、改めて面接を受けて、2007年10月にメイテックフィルダーズに入社しました。
──メーカーで働くなど、派遣という働き方以外の選択肢は考えなかったのでしょうか?
[志村氏]全く考えなかったわけではないです。ただ、私にはいろいろなことを学びたいという想いがあったので、さまざまな会社で異なる仕事を経験できる派遣という働き方は魅力でしたし、就職しようと思っても中々入れないような大企業で働けるメリットを考慮すると、派遣以外の選択肢はありませんでした。
包装設計、注射針など医療品とそのプロセス開発の仕事
──メイテックフィルダーズに入社後は、どういった仕事を経験されましたか?
[志村氏]入社後、いくつか仕事を提案され、その中には品質保証の仕事もあって悩んだのですが、当時は20代後半だったので、「設計開発の経験を積みたい」と考え、PCメーカーでの包装設計の仕事に配属してもらいました。「包装設計って何を設計するんだろう?」という、エンジニアとしての好奇心もありましたね。
具体的には、PCや周辺アクセサリーのパッケージの設計です。扱うのは紙や樹脂で、まず素材の特性を理解するところから始まりました。梱包された製品は輸送時にさまざまな条件下に置かれるため、振動や温湿度のことを考えて素材を選び、設計しなければなりません。それ以外にも、輸送コストに影響するため、パッケージの寸法にも制約がありますし、ビジュアルに関わる印刷のことも考慮しなければなりません。デザイナーという職種の方と一緒に仕事をしたのもこの時が初めてで、さまざまなこだわりを持つ人と仕事を進める難しさ、楽しさを経験することができました。
6年ほど包装設計を担当した後、2014年に医療器具・医療機器のメーカーに新たに配属されることになりました。現在働いているのもこの会社です。
──現在はどのような仕事をされているのですか?
[志村氏]注射針やその他医療機器の開発・設計、それからプロセス開発とその妥当性検証が主な業務です。
プロセス開発とは、基本的には生産性の向上を目的とするものです。ただ、医療品は人の命に関わる製品なので、製造プロセスの設計や製造条件が非常に厳しく管理されています。医療機器は、国内向けには薬事申請して審査をパスする必要がありますし、海外にも販売しているため、アメリカであればFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を受けなければなりません。
そのため、製造の工程や方法が正しいかどうか、科学的根拠や妥当性があるかを検証するバリデーションという業務があります。妥当性の評価を行いますが、私は開発の立場から「このような理由で安全です」という根拠を示さなければなりません。検証に必要なサンプル数や条件を設定するために、統計学を用いる場面も多々あります。ここでは過去に経験がないくらい、最もロジカルに「考えて」いますね。
「分からないことばかり」で専門分野の知識不足に向き合う
──統計学という言葉が出ましたが、医療に関する知識も必要そうですよね。
[志村氏]はい。統計学に医療の知識、それから医療機器の開発もしているので、化学の知識も求められます。配属された当時は、それらの知識はまったくといっていいほどありませんでした。そして仕事を進めていけばいくほど、分からないことばかり増えていきますね。
──そのような状態から、必要となる知識をどのようにキャッチアップしてきたのでしょうか。
[志村氏]分からないものは調べるしかありません。ただ、医療や化学の専門外の人間が独力で調べて、きちんと内容を理解するのは非常に難しいことですから、周りの人に頼っている部分も大きいです。配属先の企業には、さまざまな分野のスペシャリストがいます。まずは自分で調べてみて、スペシャリストの方に「こういう風に自分は理解して、こうしようと思っている」と話すと、間違っていることは指摘してくださいます。
理解が間違っていても、別に恥ずかしいことではありません。本当に恥ずかしいのは、自分の頭で考えないことです。1から10まで「教えてください」ではいけませんが、自分である程度考えた上で各分野のスペシャリストの方と密に連携することが、専門分野の知識を得たり、理解する上で大事なことだと思います。
派遣で働くエンジニアは「サービス業である」という持論
──今の配属先に10年近くおられるのは、「お客様から信頼を得ている」からこそだと思いますが、ご自身ではどのようにお考えですか?
[志村氏]長く契約していただいている、ということは、少なくともお客様にとって「自社に居てほしいエンジニア」だと思っていただけているのだと考えています。その信頼をいかに裏切らないように仕事をしていくかが重要です。
われわれの仕事は確かに「エンジニア」です。でも、派遣の場合は「サービス業」だと思うんですよね。だから、お客様に何か言われた時に、その意図をいかに汲み取るかが非常に重要です。「相手が何を求めているのか」を理解しようとしながら話を聞くと、その人の考え方が分かってきます。そうすると、10まで言われるより前に、求められているものを用意できるようになる。その思考を突き詰めると、「仕事を自分から生み出せる」状態に行き着けるのではないかと思います。
充実した研修制度と「つながりの文化」が魅力
──メイテックフィルダーズへの入社から15年ほど経ちますが、自社の魅力はどのようなところにあると思いますか?
[志村氏]私は研修制度だと思いますね。メイテックフィルダーズだけでなく、メイテックグループ全体として、研修内容が充実しています。転職当時、エンジニアとして必要な知識が足りない、と痛感していた自分が惹かれたのもこの点でした。同業他社の話を聞く機会もありますが、ここまで手厚く、会社として研修プログラムを用意してくれるところは他にないように思います。
また、メイテックフィルダーズには、エンジニアがエンジニアに技術や経験を教える、AD研修という制度があります。ADとはエリアデザイナーの略で、各営業所に所属する人数に応じてエンジニアの中から数名が任命され、地域ごとの特色を出した研修を企画する役割を持つ人のことです。ADは、営業所がカバーするエリアのお客様や案件の傾向を踏まえつつ、講師となるエンジニアの得意分野を生かした研修を企画します。
私は、2014年から甲信越の営業所のADを5年ほど務めました。座学だけではつまらないだろうと思い、実際に手を動かすワークショップ的な研修も企画していました。他の営業所で好評だった研修を聞きつけて、取り入れてみたりもしました。
AD研修は、基本的なことを学ぶものが多いです。ですから、特定の知識を深掘りするというよりは、そのテーマに興味を持ってもらったり、研修をきっかけに自らの学びを深めてもらったり、同じ営業所の誰が何に詳しいかを周知したりすることに主眼があります。これは、メイテックフィルダーズの「つながりの文化」の一環でもあります。
──「つながりの文化」とはどのようなものでしょうか。
[志村氏]エンジニア同士の縦横のつながりが強く、お互いに支え合う文化のことです。AD研修だけでなく、一泊研修会や社内イベント、部活動・同好会活動など、つながりを強めるさまざまな仕組みや機会があります。
前の会社にはそのような仕組みはなかったので、初めて一泊研修会に参加した時はとても新鮮に映りました。また、以前いた上司が走ることが大好きな方だったこともあって、マラソン部があるのですが、その幹事を務めており、その上司とは今でも親交があります。
メイテックフィルダーズには、仕事や研修だけではない部分での、エンジニア同士のつながりを大事にする社風があるのです。
──先ほど「派遣はサービス業」だという話をされていましたが、自身の技術力だけでなく、人同士のつながりを深めながら仕事をしていくことを重視されているのですね。
[志村氏]メイテックグループには、「技術力」と「人間力」が掛け合わさった「総合力」こそがエンジニアの力だという考え方があります。
派遣という働き方だと、私もこれまでそうだったように、次の配属先に移る時に全く異なる業種に配属されることも珍しくありません。すると、お客様の見方によっては「新卒者と違わない」エンジニアが配属されるわけです。そのような中で、できるだけ早く価値を提供できるようになることが、お客様から期待されることであり、その能力こそが経験によって培われる「技術力」なのではないかと私は思っています。
何をしたいか定まっていない人こそ派遣に向いている
──派遣という働き方に向いているのはどのようなエンジニアだと思いますか?
[志村氏]私は「話をするのが好きな人」だと思っています。さまざまな会社で仕事をするので、他者と話ができないと厳しいかもしれません。
それと、特定の製品、例えば「自動車をやりたい」という明確な考えがある人は向いていないかもしれません。逆に、いろいろな製品や技術に挑戦したい人、どういう分野に就けばよいか分からない人ほど、派遣という働き方は合うと思います。
派遣の良いところは、自分で転職活動をしなくていいことです。普通、転職活動をしようと思ったら、多大な時間と気力が必要になります。でも派遣なら、営業に希望を伝えれば、代わりに就業先を探してくれます。
その意味で、メイテックフィルダーズは営業担当とエンジニアの関係が近いことも魅力の1つだと思います。当社の営業担当は少なくとも月1回は配属先を訪れてくれて、直接話す機会があります。営業との距離が「近い」と、自分のキャリアの相談をする時に本音で話しやすいので、希望に合った配属先を探してもらえるのはとても大きなメリットです。
──志村さんはエンジニアとして必要な能力・スキルはどういうものだと考えますか。
[志村氏]自分で「考えること」です。では、考えるためにどうしたらいいのか。答えは簡単で、「疑問を持つこと」です。疑問を持つと、「なぜだろう?」と考えるようになります。考えると、次の行動に移れる。「考えること」そのものが、エンジニアの仕事だと言ってよいと思います。
──今後の目標があれば教えてください。
[志村氏]40代という年齢を考えると、今後配属先を移るとしても1、2回だと思うので、今の配属先で後任者を育てて、新しい仕事に挑戦してみたいと思っています。目下の課題は、お客様からの信頼を維持できる若手を育成することですね。
そして次はまた、全く違う仕事がしたいです。分野で言えば宇宙関連、または航空機関連が楽しそうだと思っていますが、品質保証の仕事にも関心があるので、これからもどんどん新しいことに挑戦していきたいです。
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ライタープロフィール
畑邊 康浩
編集者・ライター。語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集に携わった後、人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。2016年1月からフリーランス。主にHR・人材採用、テクノロジー関連の媒体で仕事をしている。