2050年のEV販売台数は推定1億台以上――EVシフトの成功はバッテリー材料の持続的な供給がカギ

世界的な潮流として、気候変動を緩和するために、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが進んでいる。オランダのライデン大学とアメリカのアルゴンヌ国立研究所の研究チームは、2050年までのEV向けのバッテリー材料の需要予測をまとめた。研究結果は、2020年12月9日付けの『Nature Communications Materials』に掲載されている。

10年前に世界で数千台規模だったEVは、2019年には750万台まで普及した。EVに主に使われる一般的なリチウムイオンバッテリー(LIB)は、リチウム、コバルト、ニッケルをカソードに、グラフェンをアノードに使用している。一般的なLIBはニッケルコバルトアルミニウム(NCA)系もしくはニッケルコバルトマンガン(NCM)系が多い。

研究チームは、国際エネルギー機関(IEA)が発表したシナリオ分析を拡張し、2050年までのEV市場の成長を予測した。それによると、2050年のEVの年間販売台数は約1億~2億台、バッテリーの市場規模は容量ベースで年間約6T~12TWhと見込まれる。バッテリー材料に対する累積需要の推定は2020~2025年の間で、リチウムが730万~1830万トン、コバルトは350万~1680万トン、ニッケルは1810万~8890万トン。現在のバッテリー生産能力とレアメタルの埋蔵量を考慮すると、サプライチェーンの拡大と新たな資源の発見が求められるが、そこには不確定要素が多い。

メーカーは現在、コストが高く埋蔵量の少ないコバルトをニッケルに置き換える方法を検討しており、ニッケル90%、コバルト5%、マンガン5%のNCM955は2030年までに実用化しそうだ。また、Teslaや公共バスのEVにも使われているリン酸鉄リチウム(LFP)は、低い製造コスト、高い熱安定性、長いサイクル寿命を特長とする。次世代バッテリーとして、レアメタルの使用量が低いリチウム硫黄(Li-S)、リチウム空気(Li-Air)バッテリーにも注目だ。

限りある資源を有効活用するために、研究チームはクローズドループのリサイクルについても議論している。乾式製錬、湿式製錬、直接リサイクルといった方法の中でも、直接リサイクル法は、ほかの2つと違って精錬や浸出工程が不要で、カソード材料の化学的構造を維持したまま回収可能なため、現在は開発段階だが、経済的かつ環境的にも大きな利点を有するとしている。

バッテリー材料は、必要とするバッテリー容量に大きく関わる。容量は、車両の設計、重量、燃費といった技術的な要因や、消費者の動向といった社会的要因に依存する。EVシフトの成功は、EVの評判を損なうことなく、必要な材料を持続的に供給できるかどうかにも関わっていると言える。

関連リンク

Future material demand for automotive lithium-based batteries

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