二酸化炭素をジェット燃料へ変換する新たな鉄系触媒を開発

航空業界では二酸化炭素排出量を削減する様々な検討が進められているが、オックスフォード大学では新しい鉄系触媒を利用した水素添加法により、二酸化炭素を還元して有効な液体ジェット燃料に変換する手法が考案された。

オックスフォード大学の研究チームが、新しい鉄系触媒を用いた水素添加法により、CO2を還元して液体ジェット燃料に変換する方法を考案した。燃焼プロセスと逆の反応を効率的に実現することで、将来的に“カーボンニュートラル”なジェット燃料を製造できることが期待される。研究成果が2020年12月22日に『Nature Communication』誌に公開されている。

世界の航空業界は、過去数十年に渡って航空機によって排出される大量のCO2を相殺するため、植樹または再生可能なエネルギー源への投資を行うカーボンオフセットに加え、水素などCO2を排出しない燃料源や電気エンジンに関する技術開発を行っている。一方で化学技術分野では、水素添加法によりCO2を還元して炭化水素燃料に変換する研究も進められている。

この水素添加法による還元は、炭素数が少なく通常は気体であるCOやCH4などの短鎖系炭化水素の生成には適しているが、液体であるジェット燃料などの長鎖系炭化水素の生成は難しいのが現状で、ジェット燃料を得るためにCOやCH4などを原料とする別工程で間接的に合成する必要がある。つまり、CO2から直接ジェット燃料などの長鎖系炭化水素を生成できれば、反応工程が少なく済み、またエネルギー消費の観点からも経済性が高くなることが期待される。

今回研究チームは、水素添加法において重要な役割を果たす触媒を工夫することにより、CO2を直接的に液体ジェット燃料に変換することにチャレンジした。その結果、触媒として有機燃焼法により合成したFe-Mn-K系を用いることで、CO2から直接的に長鎖系炭化水素を生成することに成功した。クエン酸と水素およびFe-Mn-K系触媒の混合物を350℃まで加熱し、CO2を加えることによりジェットエンジンで使える液体炭化水素を生成するというプロセスだ。CO2から長鎖系炭化水素への転換効率は38.2%、生成する全炭化水素の47.8%が長鎖系炭化水素であり、COやCH4など短鎖系炭化水素の生成は5~10%に抑えることができたという。

現在のところ、このプロセスは実験室のステンレス製リアクターの中でのみ実施されているだけで、数グラムの燃料しか生成できない。だが理論的には、大気から直接的に分離除去されたCO2を大量に使って、スケールアップすることが可能だという。これにより既存の水素添加法よりも低コストで生産可能だと、研究チームは確信している。将来、製鉄工場や石炭火力発電所の隣に製造設備を配置して、そこから排出されるCO2を活用して変換することも考えられるが、真に持続可能であるためには、製造設備およびCO2捕捉プロセスを、太陽エネルギーや風力など再生可能エネルギーによって稼働されなければならないと考えている。

関連リンク

Transforming carbon dioxide into jet fuel using an organic combustion-synthesized Fe-Mn-K catalyst

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