体温をバッテリーに利用する、自己修復型ウェアラブル熱電発電機を開発

体温の熱エネルギーを利用して発電する、低コストのウェアラブル熱電発電機が開発された。指輪やリストバンドとして、身に着けることができる。 Credit: Xiao Lab

コロラド大学ボルダー校の研究チームが、体温の熱エネルギーを利用して発電する、低コストのウェアラブル熱電発電機を開発した。ジョッギングやウォーキングなどにより発生する体内の熱エネルギーを、皮膚に貼付した熱電素子によって電気に変換するものであり、皮膚面積1cm2あたり約1Vの電圧を発電できる。時計やフィットネストラッカーなど小型デバイスの電力供給として充分なもので、伸縮性を備え形状のカスタマイズも可能など、将来的にウェアラブルデバイスの電源として期待される。2021年2月10日の『Science Advances』誌に公開されている。

温度測定用の熱電対などで活用されているゼーベック効果は古くから知られており、これを利用した熱電発電機が開発されている。宇宙開発分野においても、太陽エネルギーが届かない夜間に、質量数の大きい放射性同位体から発生するα線粒子の熱エネルギーを利用した原子力電池が実用化されている。近年では、廃熱などの未利用熱エネルギーから電気エネルギーを回収する環境技術としても注目されている。

研究チームは、このような熱電効果を利用して、人間の体温からウェアラブル電子機器に電力供給するウェアラブル熱電発電機の開発にチャレンジした。ウェアラブル熱電発電機に必要な条件としては、充分な電力と電圧を生成できることに加え、伸縮性を備え低コストかつ環境にも優しくなければならない。これまでにもウェアラブル熱電素子に関する研究はあったが、熱電素子が脆い材料であるために、伸縮性に乏しく損傷を受けやすいという問題があった。

今回研究チームは、ポリイミンと呼ばれる伸縮性に富んだ高分子材料を基板として、この上に複数のBi-Te系薄膜熱電モジュラーチップを列状に配置し、金属ワイヤで連結した。この熱電モジュラーを多数組み合わせることにより、発生電力を容易に増加できるとともに、“レゴブロック”のように形状を容易にカスタマイズできる。個々の熱電モジュラーは形状的に分離されており、ポリイミンが自在に変形することで、デバイス全体を伸縮させたり曲げたりすることができる。

このデバイスを用いることにより、面積1cm2あたり約1Vを発電できることを確認した。研究チームの計算によれば、スポーツ用リストバンドと同じサイズのデバイスを腕に貼付し、早歩きをすれば約5Vの電気を発電できる。これは、多くの時計用バッテリーの電圧よりも大きい。ジョッギングなどの運動によって体温が上がるが、通常なら周りの空気へと放散される熱を有効活用できる。

また、動的共有結合性を有したポリイミンは、破断しても破断面を密着させることによって数分で結合を回復する特性があり、デバイスとして自己修復性があることも確認された。研究チームは、「未だ超えなければならない課題が多いが、5~10年の後、製品化してバッテリーなしでウェアラブルデバイスに電源供給できるようになる」と、考えている。

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New wearable device turns the body into a battery

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