プラスチックを化学的にリサイクルするための、より持続可能な方法を開発――収率約96%で材料特性も保持

Copyright: AG Mecking, University of Konstanz

ポリエチレンに類似したプラスチックにおいて、より持続可能なケミカルリサイクル方法が開発された。出発原料の約96%を回収でき、既存の手法よりもエネルギー効率が高い。この研究は独コンスタンツ大学によるもので、2021年2月17日付で『Nature』に掲載された。

プラスチックは最も広く使用されている材料の1つで、あらゆる現代技術にとって極めて重要な要素だ。しかし、使用済みプラスチックの洗浄や高温下での除染などの物理的処理を経てリサイクルするメカニカルリサイクル(物理的再生法)では、限られた範囲でしか材料を再利用できず、プラスチックを直接再利用する妨げになっていた。それは、プラスチックが汚れていたり添加物が混合されていたりするため、材料の特性を損ないリサイクル後に粗悪な材料ができてしまうからだ。

ケミカルリサイクル(化学的再生法)はその代替手段だ。ケミカルリサイクルでは、化学的方法を経て、使用済みプラスチックを分子レベルの構成要素まで分解し、新しいプラスチックを生成する。しかし、最も広く使用されているプラスチックであるポリエチレンの場合、ケミカルリサイクルは困難だ。ポリエチレンのポリマー鎖は非常に安定しているため、低分子に戻すことが難しい。リサイクル時には600℃を超える温度が必要となるため、エネルギーを多く消費するという問題がある。同時に、収率が悪く、場合によっては出発原料の10%未満となってしまう。

それに対し、今回開発された手法では、分子レベルでの「破壊点」を用いてポリエチレン鎖を分解し低分子に戻す。低密度の鎖内官能基をポリエチレン鎖の破壊点とし、加溶媒分解によってポリエチレンをリサイクルすることが可能だ。リサイクルの際に結晶構造は損なわれず、高密度ポリエチレンのような価値のある材料特性は完全に保持される。一般的な射出成形で加工することができ、3Dプリントなどの積層造形に適している。

この新しい方法は、リサイクル時に極度に高い温度を必要としないため、従来の方法よりもエネルギー効率が高く、収率も出発原料の約96%と大幅に高い。

研究チームは、植物油をベースにしたポリエチレンに類似したプラスチックでこのケミカルリサイクルを実証した。その結果、リサイクル段階で必要となる温度は約120℃程度だった。さらに、廃棄物処理の流れで発生する混合プラスチックに対してもこのリサイクル方法を実施したところ、リサイクルされた材料の特性は出発原料と同等だったという。

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