人工光合成に新展開――金属ナノ粒子で光触媒のモチベーションを上げ、可視光に近い領域でCO2の光還元を効率化 京都大学

京都大学は2021年3月11日、信州大学とともに、光触媒の活性サイトをうまく分離することによって二酸化炭素の光還元を効率的に進行させることに成功したと発表した。光触媒の異なる結晶面に異なる金属ナノ粒子を修飾すると、効率的にH2Oを電子源とするCO2の光還元が進行するという。

研究グループは植物の光合成に倣い、太陽光をエネルギー源に水(H2O)を電子源として利用する人工光合成に着目。CO2を再びエネルギーや資源に戻せる材料となる光触媒を研究開発してきた。ただし、CO2を還元して再資源化するには、高いエネルギーの光照射が必須とされてきた。そんな中、信州大学などが2020年5月、水の光分解(水からのソーラー水素製造)でほぼ100%の量子効率を示すAl-SrTiO3光触媒を見出したと明らかにした

Al-SrTiO3は、Al(アルミニウム)をドープしたSrTiO3。1粒の結晶に異なる2つの結晶面を持ち、1粒の粒子のそれぞれの結晶面で酸化と還元という相反する反応を別々にできる特徴があり、電荷分離が効率的に進行する。しかし、単にAl-SrTiO3を用いただけでは、H2Oを電子源とするCO2の光還元にはほとんど活性を示さないという課題があった。

それが今回、Al-SrTiO3が異なる2つの結晶面を持つという特徴を最大限に生かすために、還元が進行する面に銀(Ag)ナノ粒子を修飾し、酸化が進行する面にオキシ水酸化コバルト(CoOOH)を修飾。これまでH2Oを電子源とするCO2の光還元に活性を示す光触媒は300nm以下の波長の光照射が必要とされてきたが、今回の研究においては365nmの波長の光照射でもH2Oを電子源とするCO2の光還元が効率的に進行することを確認した。

研究で使用したAl-SrTiO3は、390nm以上の波長の光を吸収できる。太陽光に多く含まれる400nmから800nmの可視光領域の光で駆動するような光触媒の開発が必要とされているが、今回の結果によって、可視光応答型光触媒の開発が一歩進んだ格好になる。

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