MIT、ポリマーベースの細長ケーブルで105Gbpsの伝送速度を達成――低コスト高効率のソリューション

Image: courtesy of the researchers, edited by MIT News

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、USBよりも10倍速いデータ転送システムを開発した。高周波シリコンチップの間を細いポリマーベースのケーブルでつなぎ、伝送速度105Gbpsを達成した。従来の銅線や光ファイバーケーブルよりコスト効率が高く、損失も低い。研究結果を、2021年2月13日から22日にオンライン開催された「IEEE International Solid-State Circuits Conference(国際固体素子回路会議)」で発表している。

リモートワークが推奨される現在、データの伝送速度は重要な指標だ。クラウドコンピューティング、インターネット、ビッグデータなど、コンピューターチップ間で共有される情報量は急増している。しかし、USBやHDMIケーブルに使われる銅線は、データが重くなるとかなり電力を消費する。筆頭著者のJack Holloway氏によると、「エネルギー消費量と情報交換比率の間にはトレードオフがある」という。

高速データ通信には、銅線よりも伝送速度が速くて損失が少なく、帯域も広い光ファイバーが使われる。しかし、光ファイバーはシリコンチップとの相互接続が難しく、コストが高くなるという欠点がある。

そこで研究チームは、ポリマーベースの誘電体材料でできた導波路を使用し、銅線と光ファイバーの長所を受け継ぎつつ、短所は補う新しいシステムを開発した。130nm SiGe BiCMOSプロセスを利用して送受信機を作製、それぞれを長さ30㎝の導波路で接続した。

導波路の断面積は0.4×0.25mm2で、「非常に小さく、髪の毛のようだ」と、研究チームを率いるRuonan Han准教授は語る。波長分割多重技術で220~335GHzの帯域を3分割し、スリムなサイズにも関わらず伝送速度は105Gbps(3×35Gbps)と、銅線ベースのUSBケーブルと比べて1桁近く速い。

導波路をポリマーベースとしたことで、銅線よりも軽量で製造コストも抑えられる。サブTHzにおけるエネルギー効率も高く、光ファイバーに匹敵するほどだ。さらに、導波路の精密な位置合わせが不要で、エポキシで直接接合できるなど、製造上の利点も多い。

データセンターのエネルギー効率を高めるほか、多くの電子機器を利用する航空宇宙産業や自動車産業において重要なソリューションになると期待される。家庭や職場においても、従来のUSBケーブルの代替となるかもしれない。

今後の研究では、ポリマー導波路を束ねるなど、さらなる伝送速度の向上を計画している。「コストを抑えたままで、伝送速度を1Tbpsにできるかもしれない」と、Han准教授は可能性を語っている。

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Data transfer system connects silicon chips with a hair’s-width cable

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