人生100年時代は外国語でボケ防止——第2言語の習得が脳の老化を遅らせるという研究

厚生労働省が発表した「令和3年簡易生命表」によると、男の平均寿命は81.47年、女の平均寿命は87.57年だという。「人生100年時代」ともいわれる近年だが、寿命が延びるとともに、認知症や神経変性疾患の症例数も増えている。

老化のスピードは人によって差があるが、できるだけ遅らせたいと思うのが自然だろう。ロシア国立研究大学高等経済学院(HSE)と英ノーザンブリア大学の研究者らは、場面に応じて2つの言語を使い分けられるバイリンガリズムは、脳の老化を遅らせる可能性があると発表した。

言語能力や空間視覚能力といった認知機能の老化予防には、認知機能の「予備力」が関わると言われている。脳が外部刺激を受けると、神経回路が強化され、予備力が蓄積されていく。神経回路が複雑になればなるほど、予備力が高まり、老化による変化が穏やかになるという。たとえば、運動や食事、仕事、趣味、教育レベル、社会経済的地位などが予備力に影響を与えると、既に証明されている。

研究チームは、バイリンガリズムが高齢者の脳機能にどのような影響を与えるか、認知予備力の他の側面とどのように関連するか調べるため、第2言語の知識を部分的にでも持っている、60歳以上の63人の成人に「フランカー課題」という実験を課した。

フランカー課題とは、たとえば「→→→→→」や「→→←→→」など、右または左を向いた5つの矢印の並びをいくつか表示し、被験者に中央の矢印の向きを素早く答えさせるもの。認知機能を評価するために使われることが多い。

通常、中央の向きが他と異なると、集中して正しく解答するのは難しくなる。しかし、第2言語を長期間勉強し、より流ちょうに話せる被験者は、実験でより良い結果を出した。研究チームは、バイリンガルの人々は日常生活で、2つの言語システムを状況に応じて選択し、切り替える必要があるためだと考えた。特に、第2言語の習熟度の方が、学習時間の長さよりも大きな役割を果たしていた。

「認知予備力を形成するほかの要因と違い、バイリンガリズムは我々の生活に絶えず存在するという点でユニークだ。運動やダイエット、転職は始めたり辞めたりできるが、言語は常に我々と共にある。話をしたり、映画を見たり、本を読んだりする時、いつも言語中枢が働いている。この実験では、興味深い現象が見られた」と、Federico Gallo研究員は語る。

研究結果は、2022年1月31日付で『Frontiers in Psychology』に掲載されている。

関連リンク

Foreign Languages Slow Down Brain Ageing
令和3年簡易生命表の概況/厚生労働省

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