原子炉や核融合炉に向けて、耐放射線性に優れた酸化物分散強化合金を開発

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テキサスA&M大学の研究チームが、ロスアラモス国立研究所および北海道大学と共同で、原子炉や核融合炉の中核部材として信頼性が高く耐久性のある材料の研究開発を推進し、中性子照射による主要な材料損傷であるスエリング(swelling)を起こしにくい、「耐スエリング性」に優れた酸化物分散強化合金(ODS)を開発している。長年にわたる研究について18件の論文が発表されており、米エネルギー省DOEや原子力業界の注目を集めているが、最新の研究成果については、『Nuclear Materials』誌の2月号に論文公開されている。

高速増殖炉の中核部材である燃料被覆管や核融合炉のブランケット構造などには、高温強度や耐クリープ性、耐食性とともに、放射線照射を受けたときにボイドを発生するスエリング現象に対する耐スエリング性などの放射線耐性が強く求められる。これまでにオーステナイト系316ステンレス鋼や、フェライト系またはフェライト+マルテンサイト系の9~12%Cr鋼が検討されてきたが、20世紀末からY2O3などの酸化物粒子を微細分散させた酸化物分散強化合金(ODS)が注目されるようになった。

ODS合金は、微細なナノメートルサイズの酸化物粒子が分散した鉄基やニッケル基の金属マトリックスから構成される。酸化物粒子は高温まで非常に安定で、最高1000℃までの優れた高温強度や耐クリープ性を有することで知られ、発電機タービンや航空宇宙分野のエンジンなどに向けた開発が進められるとともに、硬質工具などにも用いられている。

材料が中性子やγ線などエネルギーを持った放射線の照射を受けると、結晶中の原子が正規の格子点から弾き出されて格子間原子となり、空いた格子点は原子空孔になる。この弾き出し効果が大量に発生すると、多くの空孔が集合してボイドを生成し、やがては応力負荷の下で機械的な破断に至る。Y2O3などの酸化物粒子が微細分散するODS合金では、マトリックスと酸化物の界面が空孔や格子間原子の吸収サイトとなって、ボイド発生を抑制することから、優れた耐スエリング性を持つことが明らかになった。

研究チームを指導する原子力工学科のLin Shao教授は、北海道大学の鵜飼重治名誉教授が指導する研究チームと共同で、長年にわたり原子炉や核融合炉の中核部材に向けた様々な新しいODS合金を開発してきた。その過程で、従来のODS合金が良好な延性と高温強度を有するフェライト相をベースとしているのに対し、マルテンサイト相を活用することにチャレンジした。その結果、酸化物が微細分散したマルテンサイト相におけるスエリングは、フェライト相のそれよりも1桁小さいことを見出した。これは、マルテンサイト相はフェライト相に比べ、空孔や格子間原子の吸収サイトになり得る転位の密度が高いことなどが原因として考えられる。マルテンサイト相を活用した新しいODS合金は、原子あたり最大400弾き出し回数に相当する中性子照射に耐えることができ、高温強度および耐スエリング性の観点で、これまで開発された合金の中で最も優れており、DOEや原子力業界の注目を集めている。

関連リンク

Nuclear engineering researchers develop new resilient oxide dispersion strengthened alloy

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