レーザー伝送補正技術を開発――大気が取り除かれたかのように送信可能、安定性で世界記録を達成

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Credit: ICRAR.

豪国際電波天文学研究センター(International Centre for Radio Astronomy Research、ICRAR)と西オーストラリア大学が、位相安定化技術と高度な自己誘導光学端末を組み合わせることで、最も安定したレーザー伝送の世界記録を樹立したと発表した。研究成果は『Nature Communications』に2021年1月22日に発表されている。

地上―宇宙間の光原子時計による時間比較や、地上の自由空間レーザー通信の研究が進められているが、大気の乱れは位相雑音やビームの振れを発生させ、測定精度を低下させる。そのため、大気の乱れや位相雑音を取り除くことが測定精度を上げるための課題となっている。

今回、研究者らはレーザー伝送に位相安定化技術を取り入れることで、レーザーが大気からの干渉を受けることなく、2点間においてレーザー信号を送信できたという。具体的には、大気の乱れを上下左右、そしてレーザーの進行方向の3次元で補正する技術を開発。この技術により、レーザーはあたかも動いている大気が取り除かれているかのように大気中へ送信され、元の信号の質を維持したまま到着地点に達することができる。

実験では、アクティブTip-Tilt鏡を備えた光端末間(距離は265m)で位相安定化された光周波数伝送を行い、位相1Hzで2.7×10-6 rad2 Hz-1、分数周波数40秒積分で1.6×10-19の残留不安定性を達成した。なお、レーザー伝送を用いて2つの異なる場所の間で時間の流れを比較する世界で最も精密な実験であったにも関わらず、実験セットアップは人が持ち運べるサイズのものであったという。

上級研究員のSascha Schediwy氏は、「開発したレーザー伝送を地球上に1台、宇宙の衛星に1台設置すれば、基礎物理の研究がより精密に進められます。アインシュタインの一般相対性理論をこれまで以上に正確に検証することで、基本的な物理定数が時間の経過とともに変化するかどうかも発見できるかもしれません」と研究の応用についても期待を寄せている。

この精密な測定は地球科学や地球物理学の分野でも実用的な用途があり、例えば衛星を利用した時間経過に伴う水位の変化に関する研究や、地中の鉱床を探したりすることにも利用できる。また、光通信分野でも、無線通信よりもはるかに高いデータレートで衛星と地球間のデータを安全に伝送することができるという。このレーザー伝送システムを利用すれば、衛星から地上へのデータレートがケタ違いに向上するとされている。

なお、このレーザー伝送に取り入れられた位相安定化技術は、スクエア・キロメートル・アレイ(集光面積1平方kmの電波望遠鏡)の受信信号を同期させるために開発された研究背景を持つ。この技術を基に、西オーストラリアと南アフリカに数十億ドル規模の望遠鏡が建設される予定だ。

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