オンライン投稿と評価は慎重に――企業によるSNSチェックが求職者に対する偏見を生む恐れ

Photo credit: Gabrielle Henderson.

多くの人がSNS等で、休日の過ごし方や趣味のことを投稿しているが、その内容は企業の人事や採用担当者の目にとまることもあるだろう。個人の投稿が就職活動に有利にも不利にもなりうることは、心に留めておいた方が良い。求職者に関する情報をインターネットやソーシャルメディアから集め、評価し、ふるいにかける「サイバーベッティング(Cybervetting)」の利用に熱心な企業もあるからだ。

ノースカロライナ州立大学らの研究チームは、社内の人事スタッフや、求人コンサルタントの幹部、人材派遣会社の担当者など61名の人事担当者に聞き取り調査をし、サイバーベッティングが採用プロセスにどのように影響するか発表した。

そこから分かったことは、仕事に関係する投稿よりも、家族や趣味の投稿などから判断される求職者の道徳的性格が、採用に影響する可能性があるということだ。ある担当者は、従業員の飲酒は問題ないとしつつ、従業員がソーシャルメディア上に酒類の写真を投稿するのは好ましくないと話したという。

さらに、投稿から「活発」で「活動的」なライフスタイルが感じられる人の方が好まれるようだ。しかし、これは、高齢者や障害のある求職者への差別につながる可能性がある。「彼らがネット上で探しているものは、明確で暗黙の偏見を反映している」と、Steve McDonald教授は指摘する。

人事担当者は、ソーシャルメディア上にその人の「本当の」姿が表れているとみなす一方、人々に投稿内容を慎重に管理することも求めている。オンライン上の写真が偏見を生み採用に影響すると気づいている担当者もいるが、一方で全く専門的な写真がないのは問題だ、と考える人もいる。このように、採用プロセスにはソーシャルメディアへの投稿に対して、相反する見方が存在する。求職者からすれば、サイバーベッティングへの対処法は明確だとは言えないだろう。

研究者らは、サイバーベッティングを利用する場合には、明確なガイドラインやベストプラクティスが必要だと主張している。また、AIを使った採用判断の導入も進んでいるが、すでに企業側の偏見と道徳的判断がアルゴリズムに組み込まれているため、労使間の長期的な問題になるだろうとしている。

この研究結果は、2021年2月10日付で『Socio-Economic Review』に掲載されている。

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Study Highlights Pitfalls Associated With ‘Cybervetting’ Job Candidates

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