負極用の多孔性中空ナノ材料を開発――電気自動車のバッテリー容量を3倍に

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ロシア国立科学技術大学(NUST MISIS)の研究チームが、リチウムイオン電池で用いられているグラファイトに代わる負極材料として、電池容量を増大し耐用年数を延長することができる新しいナノ材料を合成することに成功した。リチウムイオン電池の3倍の比容量を実現し、充放電サイクル数を5倍に延長できる、革新的な技術として期待されている。研究成果が、『Alloys and Compounds』誌の2021年6月5日号に論文公開される。

リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高くて小型軽量化が容易であり、また高電圧を出力することができる特徴を有することから、スマートフォンから電気自動車まで幅広く使われている。一方で、電気自動車における大きな懸念の1つは、1回の充電による走行距離を左右する電池容量であり、現在負極材料の主流であるグラファイトの理論容量性能(370mAh/g)による制約がある。

このため、負極活物質として単位質量あたり3~10倍程度のリチウムイオンを吸蔵できる、シリコン等のオープンセル型多孔性粉末が注目され、これによって電気容量を増大すること等が検討されている。ところが多孔性粉末においては、リチウムイオン吸蔵に伴って体積膨張を生じて電極を損傷、充放電サイクル性や電池寿命が劣化するという問題がある。

今回研究チームは、負極活物質として多孔性微粒子粉末の研究を実施する過程で、グラファイトの電池容量や電池寿命を大きく凌駕する特性を持った多孔性中空ナノ構造C0.4Zn0.6Fe2O4微粒子を考案した。噴霧熱分解法と呼ばれる合成抽出法を用い、各金属イオンを含む水溶液を超音波によって噴霧化した後、1200℃まで加熱して水分を蒸発させることにより金属塩を熱分解させた。その結果、ミクロンまたはサブミクロンの多孔性中空ナノ構造微粒子を合成抽出することに成功した。

このようにして得られた多孔性中空ナノ構造C0.4Zn0.6Fe2O4微粒子を負極材料として用いると、現状のリチウムイオン電池よりも3倍の比容量1122mAh/gを電流密度100mA/gにおいて実現できるとともに、最大1500mA/gまで出力することができる。更に、リチウムイオン吸蔵に伴う体積膨張を抑制して、電流密度1000mA/gにおいて1000サイクル後も安定した多孔性中空ナノ構造を維持することができ、充放電サイクル数を5倍に延長することが可能なことが判った。「このような特性の向上は、独特の中空ナノ構造と金属イオンの組み合わせによる相乗効果によって達成される」と、研究チームは説明する。

今後ますます競争が激化する電気自動車においては、走行距離を確保できる大容量長寿命電池の開発が重要な鍵だ。研究チームは、更に効率的な電極用化学組成について研究を進めるとしている。

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