スズを活用した多孔質ナノワイヤ電極でスーパーキャパシタを開発――まるで電気の缶詰

IMAGE: JIA ZHU/PENN STATE

ペンシルベニア州立大学と中国電子科技大学の国際共同研究チームが、スーパーキャパシタの電極材料として、比静電容量およびレート特性を顕著に増大し高い充放電サイクル特性を維持できる、比表面積の高い多孔質ナノワイヤを開発した。スピネル型酸化コバルトCo3O4においてCo原子の一部をスズSn原子によって置換することにより、電気伝導度を大幅に向上したものであり、シンプルで低コストの水熱合成法により容易に製造できる。高速充電が可能で長寿命の電力貯蔵装置として注目されているスーパーキャパシタの比容量とエネルギー密度を向上する技術として期待される。研究成果が、2021年2月8日の『Materials Chemistry A』誌に公開されている。

電力貯蔵デバイスは、一般的にバッテリーあるいは数十mF以上の静電容量を持つスーパーキャパシタの何れかの形式によるといえる。電気二重層コンデンサとも呼ばれるスーパーキャパシタは、バッテリーに比べると短時間で充放電ができ、製品寿命も長いという特長がある。ただし、リチウムイオン電池と同等程度のエネルギーを貯蔵しようとすると、サイズが大型になってしまうため、活用は小型デバイスの電源やメモリのバックアップ電源などに留まっている。

現状のスーパーキャパシタの電極は、表面電荷量を増大するために、電気二重層の比表面積を拡大する多孔質の活性炭を用いてバインダー成形されており、電極加工コストが高いという問題もある。そのため、スーパーキャパシタの小型化および比容量やエネルギー密度増大を目標に、電極表面電荷量を低コストで増大できる可能性のあるナノ材料や2D結晶の研究が実施されている。

今回共同研究チームは、資源的に豊富で安価、理論的には電荷を迅速に伝送できるスピネル型酸化コバルトCo3O4に注目して、Co原子の一部を他の原子によって置換することで、電極としての特性を向上する可能性について検討した。その結果、置換原子にSnを用いることで導電性を顕著に向上できることを理論的に予測。シンプルで低コストの水熱合成法を用い、積層グラフェン薄膜上に一部をSn原子で置換した、比表面積の高い多孔質Co3O4ナノワイヤを成長させて電極を作製した。

実験により、2032.6F/gの高い比静電容量を示すとともに、電流密度40A/gでも比容量を55.1%まで維持でき、1万充放電サイクルまで比容量を94.3%維持できることがわかった。更に、スーパーキャパシタを組み立てた実証実験では、デバイスとして比容量200.2F/g、エネルギー密度62.6Wh/kgなどの優れた電力貯蔵特性を有することを確認した。

「スズは缶詰に使用されるなど、安価で広く入手可能であり環境的にも無害だ。開発技術は、次世代エネルギー貯蔵デバイスとして広汎な応用が期待される。シンプルな電源内蔵型デバイスとして、多くの機能を組み込むことができる」と、研究チームは期待している。

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