MIT、木の枝から作れる飲料水浄化フィルターを改良――大腸菌とロタウイルスの99%以上を除去

Courtesy: N.R. Fuller, Sayo Studio

木の枝から作ったフィルターで飲料水を浄化する手法が改良された。この技術を用いてインドで作製し、テストされたろ過システムのプロトタイプは、低コストで自然なろ過手段として有望だという。この研究はマサチューセッツ工科大学(MIT)によるもので、2021年3月25日付で『Nature Communications』に掲載された。

マツやイチョウなど裸子植物に分類される木の内部には、木部と呼ばれるストローのような導管が並ぶ辺材があり、導管が幹や枝から水分を吸い上げている。木部の導管は、天然のこし器として機能する薄膜で相互に連結されており、水分と樹液から気泡をろ過する。研究チームは、先行研究で、皮をはぎ取った枝の輪切りから単純なろ過フィルターを製作し、このフィルターがバクテリアを効果的にろ過することを示していた。

しかし、木が乾くと、こし器の役割を果たす膜が壁に張り付きはじめ、フィルターの浸透しやすさ、つまり水を通す能力、透過性が低下することが分かっている。また、時間の経過とともにフィルターは「自己ブロック」し、木部を構成する物質が堆積して導管を詰まらせるようだった。

今回、研究チームは、この技術をさらに進歩させ、実際の環境で機能することを示した。まず、辺材の小さな輪切りをお湯に1時間浸してから、エタノールに浸して乾燥させるという簡単な処置で、木の乾燥や自己ブロックにより発生する2つの問題を克服した。この処置をすることで、輪切りにされた辺材はその透過性を保持し、詰まることなく効率的に水をろ過できた。同様の処置をしたフィルターを2年間保管した後でも、市販フィルターに匹敵する透過性を維持できた。

また、処置をしたフィルターを使用した実験では、下痢性疾患の最も一般的な原因である大腸菌とロタウイルスの99%以上を除去した。これは、世界保健機関(WHO)が設定した「2つ星の包括的予防」カテゴリーを満たす水処理レベルだ。

次に、研究チームは、今回の技術をインドに持ち込みフィールドテストを実施した。インドでは水を媒介とする病気による死亡率が世界で最も高く、1億6000万人以上の人々が安全で信頼できる飲料水を手に入れることができない。現地の木から木部フィルターを作り、現地の人たちにフィルターを使用してもらって、そのフィードバックに基づいて、研究チームは、1時間あたり1リットルの水を浄化する交換可能な木部フィルターを備えた単純なろ過システムのプロトタイプを開発した。

この木部フィルターは安価で豊富に入手できる材料でできており、製造工程も単純であるため、木部フィルターの調達、製造、流通に地域社会が参加する可能性もあるとしている。

さらに、研究チームは、さまざまな種類の樹木を原料とする木部フィルターを設計製造するためのガイドラインを掲載したウェブサイトを立ち上げた。これは、起業家、組織、リーダーらがこの技術をより広範囲のコミュニティーに紹介したり、学生らが木部フィルターを使用して独自の科学実験を行ったりするよう支援することを目的としている。

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