- 2018-4-17
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- Louis Walpots, キセノンイオン, 大気吸込型イオンエンジン, 学術, 欧州宇宙機関(ESA)
欧州宇宙機関(ESA)が2018年3月5日、大気の空気分子を推進剤に使う大気吸込型イオンエンジンの実験に成功したと発表した。現在実用化されているイオンエンジンとは異なり、大気から空気分子を取り込んで推進剤とするため、低軌道で長期運用する衛星に利用ができると期待される。将来的な惑星探査においても、他の惑星の大気、例えば火星の二酸化炭素を利用することも不可能ではないだろう。
従来のイオンエンジンは、キセノンやアルゴンを推進剤として搭載し、エンジン内でイオン化させて推進力を得ている。この場合イオンエンジンの稼働時間は、搭載する推進剤の量によって制限を受けることになる。今回ESAの研究者らは、大気から空気分子を取り込み、推進剤として利用するイオン推進エンジンを開発した。
ESAの研究者、Louis Walpots氏は「このプロジェクトは、高度約200kmを毎秒7.8kmで飛行するため、地球の上層大気にある空気分子を推進剤として利用する新しいイオンエンジンを設計することから始まった」と説明する。この新型イオンエンジンは複雑な構造は持たず、受動的に推進力を生み出すことができる。
開発のポイントは、薄い大気中で、いかに効率よく空気分子を取り込めるよう、インテークをデザインすることにあったという。大気から空気分子を集めて圧縮し、陽イオン化して推進力へと変換するため、スラスター部には圧縮と陽イオン化という、従来のイオンエンジンとは異なる二段階ステップを備えている。
研究者らは、真空チェンバー内で高度200㎞の大気の状態を再現し、試験を行った。まず新型イオンエンジンが従来同様キセノンによる推進が可能かの確認から始まり、次にキセノンの一部を窒素と酸素の混合気体に置き換えて実験が行われた。キセノンイオンによる推進ではエンジン噴射は青色に見えるが、窒素と酸素からなる空気分子を使うとエンジンの噴射は紫色に発色する。実験ではエンジン噴射の色が青から紫に変化したことで、イオンエンジンが空気分子を使って推進していることが確認された。その後、空気分子だけを使ってもイオンエンジンを点火できることを繰り返し確認したという。
Walpots氏は、「空気分子によるイオンエンジンはもはや理論だけの話ではなく、実証されたコンセプトになった。今後、新たな宇宙探査ミッションへの応用が可能だろう」と、今回の成果を説明している。