流体力学によって銃殺事件での血痕の謎を解明――物理学的な理解が科学捜査に役立つ

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CREDIT: Gen Li, Nathaniel Sliefert, James B. Michael, and Alexander L. Yarin

流体物理学の観点から、貫通する弾丸によって起こる血しぶきがどのように飛散するかについて考察した理論とその実験結果が発表された。この研究はイリノイ大学シカゴ校とアイオワ州立大学によるもので、2021年4月20日付で『Physics of Fluids』に掲載された。

2003年に実際に起きた殺人事件で、犯人は至近距離から被害者の顔面を撃った。犯人は白い服を着ていたが、後方にかなりの血が飛び散っていたにもかかわらず、犯人の服には血痕が全く見つからなかった。これはなぜだろうか。

研究チームは、先行研究で、後方に血が飛び散る物理的なメカニズムを、密度の高い流体である血液が、より軽い流体である空気に向かって加速することによって引き起こされる不可避の不安定性であることを突き止めた。このように密度の異なる2つの流体が界面で接触する際に、流体の運動が不安定化する現象を「レイリー・テイラー不安定性」という。これは天井から水がしたたり落ちる原因でもある。

今回の研究では、さらに銃口ガスも考慮に入れ、ガスの渦輪と後方に飛散する血液との相互作用を示す理論的結果を発表した。

後方へ飛び散る飛沫は、貫通する弾丸によって飛散した後、被害者から射手に向かって飛んでいく。一方、銃の中で火薬が燃焼して発生する推進ガスは、銃身から高速で噴出し、乱流渦輪を形成する。そこで研究チームは、被害者から出る血しぶきが、射手から被害者に向かって移動する銃口ガスの乱流渦輪とどのように相互作用するかに注目した。

研究者らは、血しぶきは回転していながら、接近してくる乱流渦輪に巻き込まれ、その流れの中に取り込まれて流されていくと理論的に予測した。乱流渦輪が飛沫の飛散方向を反転させる可能性があるのだ。

つまり、飛沫が被害者の後ろ側に落ちることもあるということで、被害者に対して射手がある一定の位置にいれば、射手の衣服には血痕がほとんど残らない可能性がある。

今回の研究で得られた物理的理解は、法医学的分析に役立つものだ。研究チームは、この種の法医学的な難題の多くは、正当な流体力学の原理に基づいて解決できるだろうとしている。

さらに研究チームは、同誌に掲載された別の論文で、数値モデルを用いて銃口ガスの挙動を捉え、血液滴の飛行が反転することを予測した。そして、飛行の反転は実験に基づいて記録され、実験では血液滴の二次微粒化も確認されている。

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