電圧を制御して液体金属を変形させる手法を開発――アルファベットや記号も表現できる

映画『ターミネーター2』に登場する液体金属ロボットのように、自在に変形できる液体金属の開発と用途の探求は、さまざまな研究機関で進められている。特に導電性の液体金属であるガリウム-インジウム共晶(EGAIn)は高い導電性を有し、表面張力は電圧で制御可能で、室温で液体-固体相転移が可能なため、シームレスに変形可能なアプリケーションにおいて非常に有望な材料と考えられている。

英サセックス大学と英スウォンジー大学の研究チームは、電場を制御して液体金属を2次元平面で動かす方法を開発、「ACM Interactive Surfaces and Spaces 2017」で発表されている。実験では、7×7のグラファイト電極アレイ上にEGAInを滴下した。電極の直径は5.4mm、ピッチは10.4mmで、液体金属の周りは電解質(水酸化ナトリウム水溶液)で満たされている。液体金属近傍の電極に電圧が加わっていない場合は、液体金属は外力を受けずに静止している。しかし、電極に電圧が加わると、液体金属の表面張力が低下し、液体金属はアノードからカソードへ引き寄せられるように移動する。

研究チームは、形状をインタラクティブにレンダリングするためにGUIも開発し、液体金属を動かしてアルファベットやハートといった文字や記号を表現させることに成功した。さらに、液体金属を変形させてLEDのON/OFFを制御し、電子回路としても使えることを示した。この研究はまだ初期段階だが、新しいコンピュータグラフィックス、スマートエレクトロニクス、ソフトロボティクス、フレキシブルディスプレイの探求につながると研究チームは語る。

また、2020年2月には中国の精華大学の研究チームが、EGaInと中空のガラスビーズと組み合わせることで、水よりも軽い材料を開発している。軽量だが、さまざまな温度において優れた適合性、導電率、剛性を備え、形状変化ロボットや外骨格への活用が期待される。

このように多くの研究者にとって、ロボット分野において「プログラム可能であること」は長期的なビジョンの1つだという。デジタル制御を通じて物体の形状、外観、機能を変え、現在のディスプレイやロボットをしのぐ機能を持ったインテリジェントで器用、そして価値ある物の創造が期待できる。

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