高性能熱電デバイスの開発も――優れた熱電特性につながるメカニズムを解明

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低温(左図)ではAgが4個のTeから構成される四面体の中心に位置するが、高温(中央図)ではAgが中心から1つの方向にズレて、更に(右図)隣接する四面体を回転させる。回転による歪みが、熱伝導を抑制することがわかった。

ノースウエスタン大学とブルックヘブン国立研究所の共同研究チームが、テルル化銀ガリウム(AgGaTe2)材料における特異な熱収縮と低い熱伝導率のメカニズムを明らかにすることに成功した。高い電気伝導度と低い熱伝導度が両立する、新しい高性能熱電デバイスの設計原理につながるものとして期待される。研究成果が、2022年4月12日に『Advanced Materials』誌に公開されている。

熱エネルギーを電気に変換する熱電デバイス材料は、環境発電などグリーンで持続可能なエネルギー技術に変革をもたらすとして注目されている。例えばNASAの火星探査機「マーズローバー」において、プルトニウムの放射性崩壊により発生する熱を電気に変換するのに使われている。また、逆に電気エネルギーを熱に変換できることから、精密機器の作動に重要な冷却や安定した温度制御にも応用が期待されている。

より広汎な応用展開のためには熱電性能の一層の向上が不可欠であり、性能最適化の基本設計原理が求められているが、そのためには「電気伝導には優れるが熱伝導は抑制する」という、従来の物理学では相反する特性の組合せを持つ材料が必要になる。「ほとんどの材料では、電気伝導と熱伝導は連動しており、一方が高く他方が低い特別な組合せを持つ材料は極めて少ない」と、研究チームは説明する。

研究チームは、移動度の高い伝導電子と低い熱伝導率を持つ稀な材料であるAgGaTe2に注目して、その隠されたメカニズムの解明にチャレンジした。AgGaTe2の熱伝導度は、理論計算に基づいても、類似材料のテルル化銅ガリウムCuGaTe2と比較しても、予測されるよりも著しく低い。

ブルックヘブン国立研究所のシンクロトロン光源Ⅱ(NSLS-Ⅱ)のビームラインを用いて、結晶格子におけるAg原子の位置を調べたところ、Ag原子を取り囲む4個のTe原子から成る四面体構造において、Ag原子が温度上昇とともに四面体中心位置からズレていき、四面体構造を歪ませることが判った。この歪みにより、結晶の1つの軸方向では熱収縮するとともに、歪みが熱伝導を担う格子振動フォノンを散乱させるため、熱伝導率が低下することが明らかになった。このような特異な現象は、CuGaTe2におけるCu原子では起こらず、電子軌道の量子力学的な計算の結果、Te原子との結合力がAg原子とCu原子の間で異なることに原因があり、CuGaTe2では熱伝導率が低下しないことが実証された。

「我々は、格子の熱伝導率を低下できる新しいメカニズム、すなわち“隠された歪み”にたどり着いた。将来的な高性能熱電デバイス探索に対して、このような挙動を示す新しい材料を創成するのに活用できる重要な指導原理になる」と、研究チームは期待する。

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Hidden Distortions Trigger Promising Thermoelectric Property

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