地球温暖化を防止する手法を考案――エアロゾル粒子で太陽熱を遮断

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成層圏で太陽光を反射して地表に降り注ぐ日射を低減するエアロゾル粒子(図中の(3)に相当)を、成層圏に効率的かつ経済的に散布させる手法が考案された。 Graphic: Chelsea Thompson, NOAA / CIRES

米国海洋大気庁NOAAの化学研究所を中心とする国際研究チームが、エアロゾル粒子を成層圏に効率的かつ経済的に散布させる手法を考案した。成層圏で太陽光を反射して地表に降り注ぐ日射を削減することを狙う。近年、地球温暖化を抑制する方法としてアメリカを中心に検討されている「成層圏エアロゾル注入:Stratospheric Aerosol Injection(SAI)」において、ブラックカーボン(BC)粒子をエアロゾル粒子と混合し、成層圏以下の低高度で散布するというもので、BC粒子が太陽熱を吸収してエアロゾル粒子を含む周囲の大気温度が上昇し、自然に成層圏の理想高度まで上昇する。研究成果が、2021年5月14日の『Science Advances』誌に論文公開されている。

地球温暖化対策として気候介入に関する新しい提案「SAI」が、科学界で注目を集めている。太陽から地球に向けられる放射熱を低減するために、太陽光を反射するSO2などのエアロゾル粒子を成層圏に散布するというものだ。これは、1991年のピナトゥボ火山の大噴火の際に噴煙が成層圏に達し、噴煙中に含まれるSO2が成層圏中で硫酸塩エアロゾルに変化し、太陽から降り注ぐ日光の一部を反射した結果、地球の気温が下がった事実にヒントを得ている。気球を用いてエアロゾル粒子を成層圏に散布するというハーバード大学のプロジェクト提案に、マイクロソフトのBill Gates氏が出資するというニュースも話題になった。

しかしながら、SAIによる地球温暖化防止には、「大量のエアロゾル粒子-1兆から10兆グラムの硫黄」を成層圏に散布する必要があり、これを効率的で持続性のある方法で実施することは至難の技だ。成層圏で散布されたエアロゾルは数年にわたって上空に留まるが、通常の航空機が達成し得る約11kmの高さでは、重力によって数日で雨になって地上に降り戻ってしまう。現在のところ、20km以上の高さに大量のエアロゾル粒子を航空機で運搬し、均一に散布するのは難しい。

研究チームは、2017年のアメリカ太平洋岸北西部における山火事に着目した。山火事による強烈な熱と上昇気流により、BC粒子を含む膨大な煙や火災雲が成層圏まで持ち上げられ何カ月もそこに留まった。そこで太陽光を効率的に吸収するBC粒子をエアロゾル粒子と混合すれば、BC粒子が充分な太陽熱を吸収し周囲の大気温度を上昇させ、エアロゾル粒子を成層圏まで高く持上げることができるのでは、と考えた。

シミュレーションの結果、エアロゾル粒子と1m3あたり10mgのBC粒子を混合し、通常の航空機を使って低高度で散布すれば、太陽熱によって成層圏まで持ち上げることができることを確認した。研究チームは、SAIに関する壮大な地球工学的実験が、地表の気象変化、成層圏の高温化やオゾン層の欠乏などの悪影響をもたらす可能性を想定しつつも、成層圏におけるエアロゾル粒子の滞留は永続的ではなく、自然の大気循環によって数年に限定されることから、抜本的な地球温暖化防止技術の開発までの時間稼ぎとして一時的役割が期待できると考えている。

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