テルル薄膜を使用した高速電子デバイス用材料を開発

アメリカのパデュー大学電子コンピューター工学科のPeide Ye教授と同大学産業工学科のWenzhuo Wu准教授は、レアメタルであるテルルの二次元薄膜を使い、大電流を流せるコンピューターチップ用トランジスターを作製したと発表した。電子デバイスの情報処理速度の向上に貢献する可能性がある技術であり、研究成果は『Nature Electronics』に論文「Field-effect transistors made from solution-grown two-dimensional tellurene」として2018年4月17日に発表されている。

集積回路に使われているトランジスター配線は一次元的なワイヤーであり、断面積が小さく、大きな電流は流せない。このワイヤーに変えて二次元薄膜を用いることで、より大きな電流を流すことができ、電子デバイスの高速化も可能になる。よく知られている二次元材料のグラフェンや黒リン、ケイ素などの薄膜は、一般的に電子デバイスが使用される温度での安定性に欠けるという短所があったが、今回発見されたテルレン(Tellurene)と呼ばれるテルルのナノ薄膜を使って製造されたトランジスターは、低温に保たなくても室温で安定して動作することがわかった。

このテルレンは、他の二次元材料と比較して結晶のフレークが大きいという特徴がある。これは電子がフレーク間を移動する際の障壁が小さいことを意味しており、これを使ってトランジスターを構成すれば、キャリアが早く移動し大きな電流を流すことができる。

Wu准教授は「テルルは希少な元素ではあるが、我々は少量のみ必要とする合成方法を開発した。さらに同じバッチ内での生産歩留まりが非常に高いため、生産規模の拡張も容易だ」と語る。Wu准教授らの手法は、単層から数十nmまで厚みを調整でき、横方向には100μmまでの大きさの結晶薄片を作成できるという。

研究チームがテルレンで作製したトランジスターは、オンオフ比106を示し、移動度70cm2/Vsという非常に優れた特性を示したうえ、2カ月以上に渡って室温、空気中で安定して動作した。基材を用いない溶液工程による大面積の二次元テルル結晶を作りだす手法が開発されたことにより、テルレンを使用した高性能な電子デバイスの開発や、機械的振動や熱を電気に変換するフレキシブルデバイスなどへの応用も進む可能性がある。

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