樹木を伐採せずにバイオマスを得る―― AIが制御する世界最小の「収穫ロボット」

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植物の代謝物は、マラリア治療薬となるアルテミニシン、樹液に含まれる天然ゴムやバイオ燃料などのように非常に重要な化学物質を多く含んでいる。デンマーク工科大学の研究チームは、ニューラルネットワークと機械学習を利用して、機械処理や化学処理を必要とせずに、植物の細胞から自動的に化学物質を抽出する技術を開発した。研究成果は、『Plant Physiology』誌に2021年5月16日付で公開されている。

通常、植物から代謝物を抽出するには、粉砕、遠心分離、溶媒を用いた化学処理などが必要だ。目的の代謝物を含まない組織も一緒に収穫し、複数の工程を経て目的物質を単離することになるため、環境的にも経済的にもコストが高くなる。しかし、代謝物はそれぞれの細胞中で生産、保存されているので、細胞ごとに代謝物を抽出できれば、純度の高い物質を得ることが可能だ。

今回研究チームが開発した手法は、機械学習と既存のニューラルネットワークGoogleNetを利用している。顕微鏡画像の中で小さな収穫ロボットが代謝物を抽出する細胞を手動でマークすると、その情報をもとに新しい画像中から似たような細胞を見つけるようにコンピューターに学習させた。

収穫ロボットは、顕微鏡カメラで葉を撮影し、ソフトウェアを通じて収穫すべき細胞を認識する。その後、目的の細胞以外を傷つけることなく、自動的に化学物質を抽出する。収穫される細胞の直径は約100μm、抽出する針の先端はわずか10μmであり、髪の毛1本分の幅の中で収穫されていることになる。

現段階では草花や葉を対象としているが、将来的にはスケールアップし、樹木からバイオマスを取り出すことができるようになるかもしれない。研究チームは、この画期的な手法を応用すれば、木を切り倒したり傷つけたりすることなく、樹木から糖分を抽出したりバイオ燃料を作り出せるか可能性があると述べている。

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Neural networks and robotic microneedles enable autonomous extraction of plant metabolites

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