半導体設計に革命をもたらす脳から着想を得たメモリデバイスを開発

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従来の論理回路や演算回路デバイスはあらかじめ定義された動作をトランジスタと配線の組み合わせで実現している。シンガポール国立大学(NUS)の物理学者たちは、国際的な研究チームとともに、優れた記憶再構成能力を持つ新しい分子メモリスタを開発した。研究成果は、2021年9月1日の『Nature』に掲載されている。

メモリスタとは通過した電荷量に応じて自身の抵抗値を変化させ、さらにその値を電源遮断時でも記憶できる素子のこと。抵抗器、キャパシタ、インダクタに次ぐ「第4の受動素子」とも呼ばれている。その性質を利用して不揮発性DRAMや論理演算回路への応用が期待されている。

今回発表された分子メモリスタは、電圧によって再構成することができ、異なる計算タスクを埋め込むことができる。1つの素子で複数のスイッチングを行うというアイデアは、脳の働きからヒントを得たもので、論理回路の設計方法を根本的に見直すものだという。「今回の発見はフォン・ノイマン・ボトルネックを克服する高度なインメモリ・コンピューティング手法として、エッジ・コンピューティングの発展に貢献することができる」と研究を主導したNUS物理学科のAriando准教授は述べる。

NUSの上級研究員のSreebrata Goswami博士は、「分子メモリスタの再構成可能性は、リガンドと呼ばれる有機分子に結合した中心金属原子を持つフェニルアゾピリジン族に属する分子システムの構想と設計によって可能になった」と述べる。

NUS物理学科の研究員であるSreetosh Goswami博士は、40nmの分子膜を、金の上層と金を注入したナノディスクと酸化インジウムスズの下層とで挟み込んだ微小な電気回路を作成。この素子に負の電圧を印加したところ、これまでにない電流-電圧プロファイルが観測された。1つの固定電圧でオンオフが切り替わる従来の金属酸化物メモリスタとは異なり、今回の分子メモリスタは、複数の個別な連続電圧でオンオフ状態を切り替えることができたという。

研究チームは、この分子メモリスタを使って、さまざまな計算タスクを実行した。その結果、この技術が複雑な計算をワンステップで実行し、次の瞬間には別のタスクを実行するように再プログラムできることを示した。個々の分子メモリスタは、数千個のトランジスタと同じ計算能力を持つため、この技術はより高性能で低消費電力のメモリを開発する上での選択肢となるという。

「今回の成果は、まず携帯電話やセンサーなど、電力供給に制限のあるデバイスに使われるだろう」とAriando准教授は付け加えた。

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NUS researchers develop brain-inspired memory device that can revolutionise semiconductor design

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