複雑な情報処理タスクを100万倍速く解く次世代リザバーコンピューティング

  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

リザバーコンピューティングを、非常に少ない計算資源と少ないデータ入力で、33倍から100万倍の速度で実行する方法が発見された。この次世代リザバーコンピューティングのテストでは、複雑な計算問題をデスクトップコンピューター上で1秒もかからずに解くことができた。現在の最新技術を用いても、同じ問題を解くにはスーパーコンピューターが必要な上、時間がかかる。この研究は米オハイオ州立大学と米クラークソン大学によるもので、2021年9月21日付で『Nature Communications』に掲載された。

リザバーコンピューティングは2000年代初頭に開発された機械学習アルゴリズムで、時間とともに変化するダイナミカルシステム(動的なシステム)の進化を予測するなど、「難関中の最難関」である計算問題を解くために使用されていた。天候のような動的なシステムは、ある1つの条件がほんの少し変化するだけで、その先に多大な影響を及ぼすため、予測が難しい。有名な例に「バタフライ効果」がある。これは、チョウの羽ばたきによるわずかな変化が数週間後の天候に影響するという隠喩的な例だが、これまでの研究で、リザバーコンピューティングはダイナミカルシステムの学習に適しており、将来どのように反応を示すかを正確に予測できることが分かっている。

それを可能にしているのは、人間の脳に似ている人工的なニューラルネットワークを使用することだ。ただし、システムが大規模で複雑であればあるほど、また、予測の精度を高めようとすればするほど、人工ニューロンネットワークの規模を大きくする必要があり、タスクを完了するために必要なコンピューティングリソースと時間も増えていく。

また、人工ニューロンのリザバー層が「ブラックボックス」であることが問題であり、科学者たちはその内部で何かが機能していることは知っているが、内部で何が起こっているのかを正確に把握していないという。リザバーコンピューティングの核となる人工ニューラルネットワークは数学をベースに作られていることから、研究チームは数学者らにネットワークを見てもらい、「機械の中にあるこれらの部品はどこまでが本当に必要なのか」と尋ねて、この疑問について研究を進めた。

そして今回、リザバーコンピューティングシステム全体を大幅に簡素化して、コンピューティングリソースの必要性を劇的に減らし、時間をかなり短縮できることを発見した。研究者らは、この発見を、気象システムを含む予測タスクで検証した。

その結果、新開発の次世代リザバーコンピューティングは、この予測タスクにおいて、現在の最新技術より明らかに勝るものだった。デスクトップコンピューターで行った比較的簡単なシミュレーションでは、現行モデルの33〜163倍の速度を示した。さらに、高精度の予測を目的とした場合、次世代のリザバーコンピューティングは約100万倍の速度を発揮した。また、現行モデルでは4000個のニューロンが必要であるのに対し、新世代コンピューティングではわずか28個相当のニューロンで同等の精度を達成した。

速度が上がった主な理由は、同じ結果を出すために必要な「ウォームアップ」とトレーニングの量が、現行モデルに比べて格段に少ないことだ。ウォームアップとは、実際の作業に備えてリザバーコンピューティング用に入力する必要があるトレーニングデータを指す。次世代リザバーコンピューティングでは、ウォームアップの時間がほとんど必要なく、今回の予測タスクのテストでは、400個のデータポイントを使った場合でも、精度に応じて5000個以上のデータポイントを使った現行世代システムと同じ結果が得られた。

研究チームは、今回の研究を、流体力学の予測など、さらに困難な計算問題にまで応用して取り組むことを計画している。

関連リンク

A new way to solve the ‘hardest of the hard’ computer problems

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る