半導体工場での仕事内容や転職成功の秘訣。作業環境やスケジュールなどをご紹介

現代テクノロジーの最先端を行く半導体工場での仕事は、やりがいがある上に高待遇も期待できる仕事です。そうした魅力に惹かれて求人に応募する人もいるかもしれませんが、ただ漠然と転職しても、あなたのキャリアアップにつながるわけではありません。

転職を成功させるためには、業界や仕事に関する知識を事前に身に付けておくべきでしょう。これまでの経歴を生かして将来につながる業務実績やスキルを習得していくためにも、また、より良い会社・職場を見つけて転職できるようにするためにも、これから解説する半導体工場での仕事内容や転職成功のポイントについて理解し、適切な転職先を見つけられるようにしていきましょう。

半導体工場とは

不純物を利用して電気抵抗率を制御できる半導体は、ダイオード、トランジスタ、IC、LSIなどの製品の総称としても使われています。そのICなどの半導体を製造する工場の工程は10種類以上、細かく分けると400~600工程にも分かれていると言われています。製品によっては同じ工程を何度も繰り返して、複雑な回路を作り出すのです。

工程を大きく分けると、半導体の設計図を透明なガラス基板上に描く「フォトマスクの製造」、半導体の基板材料となる「ウェーハ製造」、ウェーハ上に電子回路を作成する「前工程」、ウェーハからチップを分離して組み立てる「後工程」の4つに分類できます。

半導体の歩留まりを高めて大量に製造できるように、こうした工程はクリーンな環境下で温度なども徹底的に管理されています。また、半導体製造工場は生産性を高めるため、24時間体制で休まず稼働しているところがほとんどです。

半導体工場での仕事内容

半導体製造工程の一つであるマスク製造の工程を詳しく見てみると、次のようになります。

フォトマスクは、「フォトリソグラフィ」と呼ばれる転写技術を用いて、半導体ウェーハに回路を転写するための原板で、半導体製造に欠かせない主要部材の一つです。それぞれの半導体チップの機能に応じて回路の構成や配置を設計し、それに従ってフォトマスクを作成することになります。フォトマスクの作成自体もリソグラフィ技術で透明なガラス基板上に設計パターンを描きます。半導体フォトマスク市場は大きく内製と外販に区別され、海外大手半導体メーカーでは内製することが多いです。

このような一連の工程を積み重ねて半導体が製造されます。半導体工場の仕事は、大半をマシンオペレーターが担い、製造、組み立て、検査・検品など、機械を操作して進めていくことになります。またマシンオペレーター以外にも、前述のフォトマスクに描く回路・パターンの設計、工場で使用する半導体製造装置の開発、製造装置導入後の点検・メンテナンス、工場の生産性・品質の向上に努めるマネジメント職といった業務もあります。半導体製造には多種多様な職種や仕事が関わっているわけです。

半導体工場で働く仕事環境

製造装置を使って微細加工を行うために、半導体工場では主にクリーンルームで防塵服(クリーンスーツ)を着用して仕事をします。クリーンルーム内は汚れやほこりなどが無い状態に保たれ、室温も厳しく管理された状態です。半導体製造には特に清浄度の高い環境が必要となるため、半導体工場に設置されるクリーンルームはクラス1〜100レベルのものとなります。このような場所で作業をするのが、半導体工場における仕事環境の特徴となります。

クリーンルーム内では、作業する人自体が最も汚れを出す存在となるので、身体を清潔にすることは当然として、ピアスやネックレスなどの着用も禁止されるので注意しなくてはいけません。化粧をしたままクリーンルームに入室するのを禁止する工場もありますので、半導体工場で働いた経験のある人でも、作業する環境のルールについて、詳しく確認しておく必要があります。

半導体工場で働くメリット

半導体工場で働くメリットとしては、「給与の面で恵まれている」「未経験者の募集がある」「キャリアアップができる」などが挙げられます。また、半導体工場では計画的に、ほとんどの場合は24時間稼働で製造が行われます。そのため、他の工場に比べると休みが多かったり、3交代制で8時間、あるいは2交代制で12時間の勤務が基本となることから、予想外の長時間勤務を避けられたりするのもメリットです。仕事以外の予定も組みやすいので、プライベートを充実させたい人にも向いているでしょう。

環境の整えられたクリーンルームで働くので、暑過ぎたり寒過ぎたりして体調を崩すといった心配もありません。工場勤務だから、過酷な環境で働かなくてはならないといったことがないのです。

給与の面で恵まれている

半導体工場の求人は給与面で恵まれたものがたくさんあります。他製品の工場勤務では単純な作業が主となることも多いのですが、半導体工場では最新の製造装置を使って作業する場合は高度なスキルが要求されます。都市部から離れた場所にある工場は、通勤補助なども十分に考慮されていることが多いです。通勤しにくい工場では、安心して働けるように寮が用意されていることも多いので、無駄な出費を避けてお金を貯めるのに最適な環境だとも言えるでしょう。

計画的な製造スケジュールとシフト制が採用されているので、残業や休日出勤も少なく、長期的に安定した生活をするのに適した仕事となっています。

未経験者でも応募できる求人がある

最先端の半導体を扱う仕事でも、装置をオペレーションする際にはきちんと教えてくれます。しっかりとした操作マニュアルが用意されているので、未経験者でもできる仕事がたくさんあります。

半導体分野は技術の進歩が速いので、今までの常識がすぐに古くなってしまうこともよくあります。そのため、経験者が従来のやり方にこだわってしまうと、上手くいかないこともあり、何も知らない未経験者の方が作業を覚えるのが速いといったことさえあるのです。未経験者だからと半導体工場を敬遠するのではなく、少しでも興味があれば、求人情報を詳しく調べてみるようにしましょう。

キャリアアップが可能

半導体の製造技術に関する知識やスキルを得ることで、より高度な作業を担当するようになるでしょう。資格としては、例えば、半導体を製造するのに必要な技能を修得しているかをはかる「半導体製品製造技能士」という国家資格があります。こうした資格を取得することで、社内での待遇が良くなることも期待できますし、有利な条件で転職することも可能となります。

半導体業界は新しい技術が次々に出てくるので、スキルアップするには常に最新の情報を入手して積極的に行動することが求められます。努力した分だけ待遇や仕事内容に反映される可能性も高まりますから、向上心のある人にとっては良い職場となるでしょう。スキルアップできるように仕事をしていけば、今以上に重要な職種に就くことも可能なのです。

半導体工場で働くのに向いている人

半導体工場での仕事は、作業環境を厳しく管理されたクリーンルームの中で、微細加工を中心とした作業などを毎日行うことになります。根気よく丁寧に作業できる人に向いた仕事だと言えるでしょう。

丁寧に作業を行うことで、品質が一定に保たれた製品が出来上がります。反対に丁寧に作業できない人は、次第に勝手な判断でマニュアルの指示に従わずに作業するようになり、思わぬミスを引き起こしてしまう恐れがあります。日常生活などでも、自分は丁寧に物事を処理しているなと感じられる人は、半導体工場での勤務を検討してみると良いでしょう。

さらに、半導体工場で仕事をする際には、責任感を持って担当する作業を最後まで行うことも大切です。半導体は多数の工程で複雑な処理を経て完成するものなので、作業する人全員がきちんと作業をしないと、目標とする品質を実現できません。低品質の製品が一つでも市場に出れば、企業としての信頼を大きく損ねることもあるので、自分の仕事に責任を持てる人が求められているのです。

気になる半導体工場の年収相場

Indeedによれば、機械オペレーターの平均年収は約420万円。半導体工場で働くマシンオペレーターの年収相場については、未経験者の場合は月21~22万円、月34~38万円という求人もあります。半導体関連の生産・製造技術、品質管理を扱うエンジニア職を見ると、大手企業になると年収600~800万円ほどで募集している企業もあります。

年収については、募集企業の方針、これまでの業務実績、職種・業務内容などによって変動しますので、具体的な給与については面接の時などに確認する必要があります。工場が都心部から離れた場所にある場合、通勤補助や、住宅や食事の補助がある会社もあります。最終的な金額を調べるだけではなく、給与や福利厚生の内容を詳しく確認するようにしましょう。

エンジニアを専門に転職支援を行うメイテックネクストによると、JASM(TSMC)、三菱電機、ソニーグループ、ローム、Rapidus、ルネサスエレクトロニクスなど、複数の大手企業が九州や北海道、東北を中心に、2024年~2026年の工場新設を発表しています。工場の新設、稼働に伴い、関連する職種、ユーティリティ設備のエンジニアリング、プラントエンジニア、プロセスエンジニアなどで求人が増えています。

その他に求人が増えているのは、省エネやCO2削減の知見を持つエンジニアです。世界的なカーボンニュートラル、CO2削減の潮流の中で、半導体工場も例外なくそれらに取り組んでいます。半導体は非常に繊細な製品かつ微小なゴミの混入すら許されないため、半導体工場の中は24時間空調管理がなされ、人手による汚染を防ぐため、ファクトリーオートメーションが最も進んでいます。そのため、半導体メーカー各社では、数年前からを省エネやCO2削減の知見を持つエンジニアを積極的に採用する傾向があります。年収帯について、半導体業界は統廃合を繰り返し、グローバルシェアを持つ大手企業が勝ち残ってきた歴史があるため、いずれの企業も高待遇が期待でき、年収帯は他業界と比較すると高くなる傾向があります。20代後半では平均年収550~600万程度、30代では700~1000万円ほどの年収提示が一般的です。

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半導体工場への転職を成功させるポイント

半導体工場に関わる仕事は様々ですが、マシンオペレーターとしての転職を成功させるには、身だしなみを整える、集中力を持って作業する、落ち着いて生産ノルマを達成するなどがポイントとなります。こうした内容は、他の職種でも当たり前のものと思えますが、わずかな塵も問題となる半導体工場のクリーンルームで仕事する場合、十分に注意しないといけないのです。こうした点をアピールできるエピソードがないか、応募前に考えてみましょう。マシンオペレーターの仕事に就いているのなら、普段の業務から意識して取り組み、「社内表彰を受ける」「ノルマ達成、品質管理について数値で語れる実績をつくる」など、面接時にアピールできる材料をそろえていきましょう。

半導体業界未経験者だけではなく、半導体工場での実務経験のある人でも、転職する際には改めて新しい職場のルールや慣習などを見直してみる必要があります。今まで「当たり前だ」と思っていたことでも、転職先や新しい製造装置を使う工程では、異なる対応を求められることがあります。これまでの経験にとらわれ過ぎることなく、新しい職場でも活躍できるようにしましょう。

ここからは前述のポイントについて、詳しく解説していきます。

身だしなみを整える

「工場勤務だから、身だしなみはどうでも良いだろう」と思う人もいるようですが、半導体工場で働くのであれば、服装、髪型、身だしなみを整えておく必要があります。

クリーンルームは極力ゴミが出ないようにと工夫していますので、だらしのない格好で半導体工場へ出入りすることはできません。身体に着けるアクセサリーなども禁止されるので、常に清潔でゴミの出ない格好を心掛けることが大切です。

半導体工場に勤務したいと思っているのなら、普段から清潔な身だしなみになるよう心掛けてください。ほこりや塵が身体や服に付かないように、自室の掃除も小まめにすることが肝心です。このような姿勢は、面接の際にもチェックされます。面接時は普段着ではなくスーツを着用するようにしましょう。

集中力を持って作業する

精密部品である半導体を扱う作業には、集中力が求められます。極めて小さな部品であるものの、毎日大量に製造されるために、わずかなミスが大きな損失につながる可能性があります。半導体工場での作業中は間違いがないように、集中力を持って担当する仕事を全うしなくてはなりません。

毎日同じ作業を繰り返す場合は、作業に慣れると気を抜いてしまう時もありますが、そのようなことをしていると大きなミスにつながります。他の人からも注意されることになって、人間関係が悪化する原因にもなりますから、常に気を引き締めて作業するようにしましょう。

ただし、100%集中して作業しようとすると長時間持ちませんから、少し余裕を持って作業するのが重要です。最初は大変そうに感じても、コツさえつかめば時間も気にならずに、作業を続けられるようになるでしょう。

落ち着いて生産ノルマを達成する

半導体工場は計画的に運営されていますので、生産ノルマが決められています。生産ノルマが達成されないと、予定以上の経費が発生するなどの問題が起こります。生産ノルマが問題なく達成できることを作業員全員が目標にしています。

ただし、転職したばかりの時は、環境や作業に慣れるので精一杯で、生産ノルマなど気にする余裕はないでしょう。まずは担当する作業が正しくこなせるように努力しましょう。いきなりノルマを強要するようなことはないでしょうから、最初は焦らずに仕事を覚えることに専念してください。

仕事に慣れてきたら、生産ノルマについても考えるようにして、作業することが肝心です。余裕を持って生産ノルマを達成できるように行動して、何か問題があるようであれば、早目に責任者などに相談するようにしましょう。

半導体工場に関する求人の会社選びのポイント

半導体工場に関する求人は、工場を運営する会社が募集するものと、工場に社員を派遣する会社のものに分類することができます。それぞれ長所/短所がありますが、給与や福利厚生などの条件を重視するのであれば、工場自体を所有する半導体会社に応募するのがよいでしょう。長期的に安定した立場で仕事をすることが可能で、落ち着いて作業に専念できます。

派遣や請負の会社の場合は、すぐに希望する職種で働ける可能性が高いのがメリットです。契約・派遣社員なら、未経験者でも採用されやすい求人が多数ありますから、まず半導体工場での実務経験を積みたいのなら、派遣・請負会社の求人に応募するのもいいでしょう。実務経験を重ねれば、より高度な就業先に派遣されたり、半導体会社の求人に応募して正社員として採用されたりする確率も高まります。

半導体工場での仕事内容も重要ですが、どのような会社に就職するのかも同じように大切です。慎重に会社を選ぶようにしましょう。

メイテックネクスト 東京支社長の梅津太一氏のコメント
「省エネ技術、ファクトリーオートメーション、無人搬送車(AGV)など、今後どの業界でも必要とされる、最先端技術に触れる機会があること、汎用性の高い経験が積めることが半導体工場で働くことの一つの魅力です。また、どのような種類の半導体を製造する工場かによって、学べること、得られる経験が変わります。製品用途、微細化の程度、自動化の進行度など、ご自身がどのような技術を習得したいのか、またどのような経験を活かしたいのかを検討しながら企業(工場)を選ぶことが良いでしょう。同業界においては、各社、グローバルで優位性を発揮するために、目まぐるしいスピードで製造プロセスや検査工程、コア技術が変わっていきますので、工程やコア技術における今後の伸張性や、企業の成長性等、複数の観点から判断することが重要です」

半導体工場に関する求人への転職なら「メイテックネクスト」

一口に「半導体メーカー」といっても、個社単位では大きな違いがあります。先にお伝えしたように、様々な観点から複合的に『自分に合う会社』を探し、選定することが極めて重要です。弊社のアドバイザーは技術・キャリアに詳しいだけでなく、半導体業界全体の動き、個社単位での成長性にも精通しております。様々な観点から長く働く1社を探したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

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メイテックネクスト

まとめ

半導体工場での仕事は、精密で高度な技術を要求される仕事です。半導体業界の成長が著しく、新しく開発される技術への対応も必要となりますが、スキルアップする機会も豊富なために、未経験者にも魅力的な職場となっています。

普段の生活とは接点がないため、半導体工場の情報を入手しにくい面もありますが、積極的に転職活動を行えば、良い就職先に巡り合える機会も増えていきます。最新の情報を探して、半導体工場への転職を成功させるようにしましょう。


記事監修
梅津 太一(メイテックネクスト 東京支社長)
中小から大手メーカーに対する採用コンサルティングを4年、その後はキャリアアドバイザーとして11年、延べ4000名以上のエンジニアのキャリアカウンセリング経験を持ちます。得意としていることは「求職者の強みの抽出」と「要素技術軸、工程軸(方法論)でのマッチング」です。昨今のマーケットは先が読みくいが故、自身が今どのような経験を積むべきか、また、どの分野(強み・弱み)に負荷をかけ成長を促すかを求職者と一緒に考えていきたいと思います。


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