道具の使用で構文理解が向上、逆もまた然り――仏INSERMなどが共同研究

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© Claudio Brozzoli

類人猿と人間との大きな違いは、人間は高度な道具を使えること、高度な言語が使えることだとよく言われる。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)などが2019年の研究で、道具の使用に特に長けていること、構文能力が高いことの間に相関関係があると明らかにしていたが、このほど、この2つのスキルは脳の同じ領域にある同じリソースに依存していることが明らかになった。

さらに、道具を使った運動トレーニングは複雑な文章の構文を理解する能力を向上させ、一方で、文章の構文を学ぶことで道具を使う能力が向上することが分かった。これらの知見は、言語能力を失った患者のリハビリテーションを支援する臨床への応用が期待される。

研究チームはまず、MRIを用いて、ペンチを使った運動トレーニングとフランス語の構文演習を行ったときに、被験者の脳の大脳基底核という領域が共通して活性化されることを発見した。

これら2つの活動が脳の同じリソースを使用していることを考えると、一方をトレーニングすることでもう一方の能力を向上させることは可能なのだろうか。そんな疑問に答えるため、研究チームはペンチを使った30分間の運動トレーニングの前後に、被験者へ構文演習を課した。その結果、道具を使った運動トレーニングが構文演習のパフォーマンス向上につながることを実証できた。

逆に、複雑な構造の文章を理解する演習によって言語能力を鍛えると、ペンチを使った運動のパフォーマンスが向上することも明らかになった。なお、対照群として、ペンチを使わず素手で運動トレーニングをした後で同じ構文演習を課したグループ、運動トレーニングを全くやらずに構文演習を課したグループを用意したが、どちらのグループでも改善は見られなかったという。

「現在、発達性言語障害のある若者などに向けて、運動能力が比較的保たれている患者の言語能力のリハビリや回復を支援する治療計画書を考案しています。今回の発見は、臨床応用すれば画期的な成果が見込めるばかりか、歴史の中で言語がどのように進化してきたか、ヒントになるものです。私たちの祖先が道具を開発して使うようになったとき、道具の使用が脳を大きく変化させて、認知的な要求が課せられました。それが構文のような特定の機能の出現につながったのかもしれません」とINSERMの研究者であるClaudio Brozzoli氏は語った。

本研究の成果は、INSERM、フランス国立科学研究センター(CNRS)、リヨン第1大学、リヨン第2大学、スウェーデンのカロリンスカ研究所との共同研究によるもので、2021年11月12日付で科学誌「Science」に掲載された。

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