骨折部に潜り込んで「骨」となるマイクロロボットを開発

Photo by Olov Planthaber

スウェーデンのリンシェーピン大学と岡山大学の研究チームは、柔らかい組織が荷重に耐えられる構造に変化する骨の成長にヒントを得て、最初はさまざまな形に変形できる柔軟な素材が自律的に骨のように硬くなる技術を開発した。ソフトロボティクスや骨の修復に応用できる可能性がある。研究の詳細は、『Advanced Materials』誌に2021年12月7日付で公開されている。

私たちの頭蓋骨は生まれるときには泉門とよばれる隙間があり、柔らかい結合組織性の膜だけで覆われている。そのおかげで狭い産道を通る際も、頭蓋骨を変形させてスムーズに通過できる。生後はこの柔らかい組織に骨の成分が入り込んで成長し、徐々に硬い骨へと変化する。

今回開発した素材は、このような骨形成のプロセスとよく似ている。一種の単純なマイクロロボットである柔軟な素材は、電圧をかけることで変形でき、その後体内で自ら硬い骨へと変化していく。リンシェーピン大学の材料工学の知見と、岡山大学が発見した短期間で骨の成長を促進する生体分子を組み合わせることで、開発に成功した。

素材はゲル状のアルギン酸を土台としており、ゲルの片面には電圧をかけるとマイクロロボットを一定方向に曲げることができる導電性高分子材料を配置し、反対側には岡山大学が発見した生体分子を付着させた。この生体分子は骨の形成に重要な細胞の細胞膜から抽出された細胞膜ナノ断片で、カルシウムとリンを含む生体環境に似た細胞培養液に浸すとゲルをミネラル化して骨のように硬くする。

研究チームは、この素材を骨折などの治療に応用したいと考えている。複雑な骨折の隙間にこの柔らかいマイクロロボットを注射器で流し込んで任意の形に変形すると、自然に固まり新しい骨を作るための土台になるというのだ。今回の研究では、ニワトリの骨にこのマイクロロボットを巻きつけて培養し、ミネラル化したゲルがニワトリの骨と一体化した状態で付着することを実証している。

現在はこの素材の生体適合性を詳しく知るために、生きている細胞とどのように作用するのかを調べているという。

関連リンク

Bone growth inspired “microrobots” that can create their own bone
Biohybrid Variable-Stiffness Soft Actuators that Self-Create Bone

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