磁気秩序と極性歪みを併せ持つ新しい超伝導材料の合成に成功 大阪大学と岡山大学の研究グループ

大阪大学は2023年2月8日、岡山大学と共同でユーロピウム(Eu)と金(Au)とビスマス(Bi)を用いて、磁気秩序と極性歪みを併せ持つ新しい超伝導材料の合成に成功したと発表した。研究グループでは、量子コンピューターのための超伝導素子など革新的電子デバイスへの応用が期待できるとしている。今回の成果は、日本物理学会発行の英文誌Journal of the Physical Society of Japan 2023年1月号に掲載された。

研究グループはEuとAu、Biからなる磁性半金属EuAuBiの単結晶合成に成功し、4Kでの反強磁性転移と2.4Kでの超伝導転移を観測した。EuAuBiは磁性を担うEu2+(S=7/2)からなる三角格子層と、c軸方向に極性をもたらすAu-Biからなる歪んだハニカム格子層が交互に積層した結晶構造を持ち、磁気秩序と極性構造を有しながらも超伝導を示す特性がある。

さらに、この物質の超伝導特性を詳細に調べるため、研究グループは外部磁場を面内と面間方向に印可した場合での超伝導転移温度の変化を0.1K付近の極低温まで測定。その結果、面間磁場において従来型の超伝導体で期待されるパウリ極限を大きく超える10Tの超伝導臨界磁場が実現する一方で、面内磁場の場合は3T程度と、臨界磁場に大きな異方性があることがわかった。また、第一原理計算から、Biのp軌道由来の強いスピン軌道相互作用と極性構造を反映し、フェルミ準位近傍のバンド構造においてラシュバ型のスピン分裂が起きていることも確認した。

Biのp軌道とAuのs軌道の混成に起因したギャップ構造の存在から、トポロジカルなバンド構造が存在することもうかがわれ、パウリ極限を超える大きな臨界磁場とその異方性は、トポロジカル表面での超伝導や、強いスピン軌道相互作用に起因したラシュバ型のバンド構造を反映した可能性がある。こうしたことからEuAuBiは新しい非従来型の超伝導を示す系であると考えられる。

EuAuBiの超伝導は大きな磁化と共存できるため、新しい外場応答を示す超省エネスピントロニクス材料として活用できる可能性がある。さらに研究グループは、極性構造に由来したトポロジカル超伝導の実現と量子コンピューター素子への展開に期待を寄せている。

関連情報

磁性、極性、超伝導が共演する希有な新材料。 トポロジカル半金属を舞台に – リソウ

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