冬は暖かく夏は涼しい――住宅屋根向けのスマートコーティング材を開発

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パルスレーザー堆積装置により作成された温度適応型放熱性コーティングTARCのサンプル。この材料は柔軟で、屋根の上に貼り付けることができる。/Credit: Thor Swift/Berkeley Lab

ローレンス・バークレー国立研究所(LBL)とカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究チームが、天然ガスや電気を消費することなく、屋内を冬は暖かく夏は涼しく保つことができる、全シーズン型のスマートコーティングを開発した。二酸化バナジウム(VO2)を活用するコーティングで、外気温が約25℃より低温時に太陽からの熱赤外線を吸収維持して屋内を暖房し、25℃より高温時には吸収した熱赤外線を大気に向け放射して屋内を涼しく保つ。研究成果が、2021年12月16日に『Science』誌に公開されている。

高反射性の塗料やタイルなどを利用した既存のクールルーフシステムは、太陽光を反射するとともに、吸収太陽熱の一部を熱赤外線として放出する放射冷却により屋内温度上昇を抑制している。だが、一般的なクールルーフは冬でも熱を放射し続けるため、暖房コストを引き上げてしまうという問題がある。

これまで研究チームは、VO2化合物が電気を良く伝える一方、熱は良く伝えない断熱材のように挙動することを見出していた。「電子が熱と電気を同じように良く伝える大半の金属とは対照的」だとし、さらにVO2は熱赤外線を吸収しないで透過する一方、高温になると金属状態に相転移して熱赤外線を良く吸収し、熱放射による放射冷却効果を持つようになることも示した。

研究チームは、外気温の変化に基づくVO2の相転移現象を、暖房から冷房への自動切換え装置として利用することを考えた。ラボ実験の結果、VO2薄膜デバイス(温度適応型放熱性コーティングTARC)の熱放射率は、15℃以下では0.2であるが、30℃以上では0.90に自動的に変化することを確認した。一般家屋における屋外実験の結果でも、TARCは年間を通して日光の約75%を反射するが、外気温が25℃以上では熱放射率が約90%と高く、放射冷却効果が発揮される一方、外気温が低下すると熱放射率は自動的に低下し、日光による熱を屋内で活用できることが判った。

更に、LBLのヒートアイランド研究グループによるシミュレーションの結果、米国の15の気候帯の内12について、TARCは既存のクールルーフシステムを凌駕する省エネ効果を発揮することが判った。特に、サンフランシスコなどの昼夜の温度変化が大きい地域、およびニューヨークのように夏冬の温度差が大きい地域で顕著で、TARCを設置することでアメリカの平均的な家庭で電気代を最大10%節約できると推測している。

研究チームは、もう少し大きなプロトタイプを作成し、実際のルーフコーティングとしての性能を実証する予定だ。また、携帯型デバイスのバッテリー寿命を長くしたり、極端な温度変化から人工衛星や自動車を守る熱防護コーティング、およびテントや温室カバー、帽子やジャケット用の温度制御型繊維にも使える可能性があると期待している。

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