特定のレアメタルのみに依存しないリチウム蓄電池正極材料の合成に成功 東北大

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東北大学は2022年4月12日、同大学金属材料研究所の研究チームが、特定のレアメタルのみに依存しないリチウム蓄電池正極材料の合成に成功したと発表した。

リチウム蓄電池の正極材料には、一般的にLiMO2M:遷移金属)で表される層状岩塩型構造を有する材料が用いられる。同構造を1種類のMで構成する遷移金属元素はNi(ニッケル)、Co(コバルト)、Cr(クロム)の3元素のみで、いずれもレアメタルに該当するものとなっていた。

そこで今回の研究では、レアメタルに依存しない材料作成を目指し、合金で知られるハイエントロピー化の概念を酸化物に用いたハイエントロピー酸化物正極材料の実現可能性を検証した。ハイエントロピー化とは、多数の元素を混合してエネルギー利得(配置エントロピー)を向上させ、本来混ざり合わない元素を混合することを指す。

今回、確立された系のLiMn1/3Co1/3Ni1/3O2(MCN、擬三元系)を化学組成のベースとし、さらにCrや Feを添加したLiCr1/4Mn1/4Co1/4Ni1/4O2(CMCN、擬四元系)およびLiCr1/5Mn1/5Fe1/5Co1/5Ni1/5O2(CMFCN、擬五元系)を合成した。

これらは、層状岩塩型構造を有さない元素を遷移金属のみの比率で40%含んでいる。一方で、CMCN、CMFCN双方の組成において層状岩塩型構造を有する物質となった。

充放電試験を行ったところ、これらの物質への可逆的なLiの挿入および脱離が確認された。このことは、正極材料として利用できることを示している。

さらに、CMCN、CMFCNの温度上昇時の結晶構造を高温X線回折測定で解析したところ、前者は1000℃、後者は850℃において、Liと遷移金属が層状に規則化した層状岩塩型構造から、全ての金属元素が同一の結晶学的位置を占有する不規則岩塩構造へと相変態する、規則/不規則変態が観測された。

従来用いられるLiCoO2はおよそ900℃で熱分解するため、このような規則/不規則変態は観測されない。CMCN、CMFCNのハイエントロピー化に伴い、高温における相の安定性が向上したことが示唆される。

一方で、これらの物質を用いて繰り返し充放電をした際、既存のリチウムイオン電池材料のLiCoO2とは異なる2種類の劣化挙動を示した。

詳細な解析を行ったところ、Mnなどの遷移金属カチオン(陽イオン)が酸素配位八面体のLiカチオンサイトへ移動する「カチオンミキシング」が最初の数サイクルで急速な容量劣化を引き起こし、元の八面体からLi層内の四面体サイト間へのCrやFeの移動が蓄積し、Liの再挿入を阻害することが数十サイクルに及ぶ緩慢な劣化を引き起こすことが判明した。

今後は、劣化の要因となる元素の移動を抑える元素を添加し、組成を調整することで、より優れた正極材料の開発に至ることが期待される。

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