ペロブスカイト太陽電池製造の重要な障害を克服、変換効率20.1%の電池が簡単に安く印刷可能に

トロント大学工学部の研究チームが、光励起された電子を効率的に取り出す電子選択層(ESL)を150℃以下の低温プロセスで形成する手法を考案。ペロブスカイト太陽電池製造の重要な障害をブレークスルーすることに成功した。この技術により、簡単に安く太陽電池を印刷できようになると同時に、柔軟なプラスティックのシートやシリコン結晶の表面に積層することが可能になる。

印刷によりペロブスカイト太陽電池を作製する技術はすでに確立されている。ペロブスカイトの原料を液体に溶解すれば、一種の”ソーラー・インク”を生成できるため、簡単なインクジェット手法を用いてガラスやプラスティックなどの上に印刷できるのだ。研究チームを指導するTed Sargent教授によると、この技術を使えば非常に低コストでペロブスカイト太陽電池を作製できるという。

しかし、これまで大きな障害があり、上述の手法を十分に活用できていなかった。発電により電子が回路に流れるようにするには、太陽エネルギーにより励起された電子を、ESLにおいて結晶から取り出す必要がある。しかし、効率的なESLを作ることが困難で、ペロブスカイト太陽電池の開発を妨げてきた。

ポスドク研究者のHairen Tan氏は、「ESLを作る最も効率的な方法として、粉末を用い500℃以上の高温で焼結する方法がある。だが、それでは基板となるプラスティックのシートやシリコン結晶を溶融してしまう」と説明する。

そこで研究チームは、新しい化学反応により溶液中のナノ粒子を用い、電極の表面にESLを形成する手法を開発した。熱は依然として必要だが、プロセス温度は常に150℃以下にとどまる。150℃以下という温度は、多くのプラスティックの融点よりもはるかに低い温度だ。

ナノ粒子には塩素原子が被覆され、ペロブスカイト層表面に強く結合するので、電子を効率的に取り出せる。この手法で作られた太陽電池の効率は20.1%と十分に高い。

もう1つのメリットは安定性だ。多くのペロブスカイト太陽電池は、たった数時間後に顕著な性能低下を生じるが、研究チームの太陽電池は500時間使用後においても90%以上の性能を保つことを確認した。

製造プロセスを低温に維持できるこの手法が開発されたことで、ペロブスカイト太陽電池を使って充電機能を有するスマートフォンのカバーや、太陽電池機能を持つ窓が現実のものになるかもしれない。近い将来、従来型のシリコン太陽電池と組み合わせて使うことも可能となる。

Tan氏は「この低温プロセスにより、下側の材料を破損することなく、ペロブスカイト・セルをシリコン表面に積層できる」と語る。また、「ペロブスカイト-シリコンのハイブリッド太陽電池は、効率を30%以上に向上できる可能性があり、太陽電池は高い経済的競争力を持つことになるだろう」としている。

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