過酸化水素を安全なロケット燃料に――3Dプリントで新たな触媒構造を開発

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安全な過酸化水素をロケット推進剤として使うときに必要な触媒構造を、3Dプリンティングを用いて最適化する。

ニュ-ジーランドのカンタベリー大学の研究者が、高濃度過酸化水素をロケット推進剤として使うときに必要な触媒構造を、3Dプリンティングを用いて最適化する研究を実施している。1984年のロサンゼルス五輪の開会式に登場したロケットマンが背負ったジェットパックも、高濃度過酸化水素による一液式ロケットを使っていた。中低推力ロケット用途として適用するため、過酸化水素の分館反応の中核となる触媒構造の設計に最先端の3Dプリンティングを活用することで、低コストでの推進性能向上を目指すものだ。

強力な推進力よりも再点火など高い制御性が求められる人工衛星の姿勢制御エンジンや中低推力グレードのロケットには、ヒドラジン(N2H4)や高濃度過酸化水素(H2O2)といった一液式ロケット燃料が用いられる場合が多い。ヒドラジンや高濃度過酸化水素が触媒構造を通過すると、分子の分解反応が誘起されて大量のエネルギーと熱が生成される。その結果発生する分解生成物の高温ガスを、噴射ノズルから噴出することで推力を得る。触媒による一液式ロケット燃料は、2液式のように酸化剤や点火装置を必要とせず、構造がシンプルという特長を有する。

ただし、長年ロケット燃料として使われているヒドラジンは発がん性があるとされ、化学的に不安定で熱や光、金属によって容易に分解反応が生じる危険性がある。そのため、充填時には作業員は厳重な防護服を身に着け、特別な安全機器および対策が必要となり、コストや対応時間を増大させている。

一方で過酸化水素は、基本的に人体に対して無毒であり、低濃度のものは一般家庭用でも用いられている。カンタベリー大学の研究プロジェクトで連携するDawn Aerospaceも、人工衛星を軌道に載せる再利用可能なスペースプレーンに、推進剤として高濃度過酸化水素を使っている。だが、その分解のための触媒構造は1960年代からある極めて初歩的なもので、高価な銀や白金を用いる高コスト化、触媒の損耗および大きな圧力低下の克服、推力の最大化、触媒構造全体の軽量化といった課題を抱えている。

化学工学科の博士課程の学生であるSimon Reid氏は、3Dプリンティング技術の航空宇宙分野における活用を模索し、高濃度過酸化水素を分解する触媒構造を効率化最適化することにチャレンジしている。触媒構造としては、界面活性科学の分野で知られている「ジャイロイド形状」を取り入れ、触媒床としてはセラミックを採用して触媒材料を表面にコーティングした。

「ジャイロイド形状は触媒プロセスに適しているが、従来の手法では製造できない。3Dプリンティングによるデザインで、触媒の損耗と大きな圧力低下の克服、推力の最大化を実現したい」と、Reid氏は説明する。今後、新しく設計された触媒床の効率試験を開始する予定であり、既存手法の結果と比較する。「過酸化水素を研究している会社は非常に少ない。効率的な触媒を設計することにより、ヒドラジンに代わる実現性の高い推進剤として過酸化水素を活用し、航空宇宙分野において少しでも安全性を高めることに貢献したい」と期待している。

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