液体燃料を高分子ゲルに含有する安全な貯蔵法を発見――蒸発速度を抑制 芝浦工大と東京工大

芝浦工業大学は2022年5月24日、同大学工学部機械機能工学科および東京工業大学工学院機械系の研究チームが、液体燃料を高分子ゲルに含有する安全な貯蔵法を見出したと発表した。液体燃料の安全な輸送や貯蔵、利用に寄与することが期待される。

エネルギー密度が高い液体燃料は、ロケットやガスタービン、自動車のエンジン、ボイラーといった用途に用いられている。蒸発しやすい点が短所となっており、引火性の高い可燃性混合ガスを生じさせることで、爆発や火災といった重大事故の原因となる可能性を有する。

液体燃料の蒸発を防ぐため、燃料を添加物でゲル化させるゲル化燃料の検討が近年進んでいる。しかし、長期間での安定性に欠けることが課題となっていた。

同研究チームは今回、エタノール分子を化学的に長く絡み合ったPNIPAAm(N-イソプロピルアクリルアミド)高分子鎖の中に膨潤することで、蒸発速度を抑制できることを確認した。

さらに、エタノールを含んだ小さなPNIPAAmゲル球体を作製し、ほぼ同一の表面積および質量のエタノールを蒸発皿に注ぐことで、蒸発速度を計測した。実験の結果、エタノールを高分子ゲルの中に保持することで、燃料の急速な蒸発を抑えられることが判明した。

エタノールを含有した高分子ゲルの燃焼の様子

化学的に強く架橋した無数の三次元高分子鎖が高分子ゲル中に存在しており、さまざまな物理的相互作用によってエタノール分子と結合する。その過程でエタノールの蒸発を抑えることが可能となる。

加えて、さまざまな大きさのエタノールを保持したゲル球に着火し、質量と形状の変化を観測することで、高分子ゲル内のエタノールの燃焼特性を調べた。その結果、同ゲルの燃焼は、主にエタノールが燃焼する段階と、エタノールおよびPNIPAAmポリマー自体が共に燃焼する段階の2つで構成されることが明らかになった。

主にエタノールが燃焼する段階は、「d2則」と呼ばれる液滴燃焼に当たることも判明した。エタノールを含んだゲルの燃焼が、液体燃料の液滴燃焼と同一の法則に則っていることを示しており、両者の燃焼特性が類似していることが明らかになっている。

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