二酸化炭素分離膜における長年の課題を克服――既存の安価な分離膜表面を化学修飾により選択性を150倍に

Image credit: Chris Robert.

ノルウェーのSINTEF Industryと米ノースカロライナ州立大学の研究チームが、発電所からの排気ガスなどの混合ガスから、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を高効率に除去できる新しい分離膜技術を開発した。本研究成果は2022年3月31日、「Science」誌に掲載された。

分離膜は、混合ガスからCO2を除去する上で魅力的な技術だ。なぜなら、分離膜はコンパクトであり、さまざまなサイズに加工でき、さらにパーツ交換が簡単にできる。他のCO2除去技術にしばしば用いられる化学吸着法は、非常に設置面積が大きく、また、用いられる液体アミンが毒性や腐食性を示す傾向がある。

分離膜は、混合ガスの他の成分よりCO2を選択的に速く透過させる。結果として、膜を透過したガスは、膜透過前のガスよりCO2の割合が高くなる。膜を透過したガスを集めることによって、混合ガスの中から選択的にCO2を集めることが可能だ。

分離膜技術において、トレードオフの関係にある膜の透過性と選択性が長年の課題であった。効率よくガス分離するためには、ガスの透過性を上げる必要があるが、一般的に透過性が上がると選択性が落ちる。つまり、CO2だけでなく窒素や他の成分も膜を速く透過するようになる。透過したガス中のCO2の割合が減ってしまい、集められるCO2量が少なくなってしまう。

研究チームは、既存の透過性の大きい分離膜表面に、親水性でCO2に親和性のある化学活性な高分子鎖を成長させた。この表面修飾により、膜の透過性をほとんど変えることなく、CO2の選択性を約150倍以上に大きくすることに成功した。

分離膜の残る課題はコストだ。従来の高効率な膜技術は、コストに問題があった。この分離膜は、すでに広く使われている膜材料の表面修飾により選択性を向上させているため、従来の分離膜より低コストに作製できる。

研究チームは、地球規模の気候変動対策や新規の医療/産業用途など、分離膜の実用先を探るため、産学連携に前向きな姿勢を示している。

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New Polymer Membrane Tech Improves Efficiency of CO2 Capture

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