ガソリン車をよりクリーンで効率的にする新しいエンジン点火技術――自動車メーカーがすぐにでも導入可能

ナノ秒パルスパワーシステムを設計製造する米Transient Plasma Systems(TPS)は、2022年6月8日、高度な点火技術が、大幅にクリーンなガソリンエンジン向けの実証済みソリューションを提供することを確認したと発表した。このソリューションは、自動車メーカーが直ちに導入可能なものだという。

自動車メーカーや議会が強い意欲を持って取り組んでいても、一夜にして電気自動車(EV)が普及した世界に移行することは不可能だ。TPSの共同創業者兼CEOであるDan Singleton氏によると、今後10年間で、世界中で何億台もの内燃機関自動車が販売されると予測されているという。そして、世界的なCO2削減目標を達成するために、よりクリーンなガソリンエンジン車の生産が急務であり、最後の大きなCO2削減を達成するには、先進的な点火装置が必要であることを自動車メーカーは認識していると述べている。

TPSは、さまざまな用途に対応するナノ秒パルスパワーシステムを開発しており、同社のナノ秒パルスパワー点火装置による、内燃機関自動車の燃費向上能力と排出ガス削減能力について、アメリカのミネソタ州に位置するFEV North Americaにて評価試験を実施した。FEVグループはドイツに本社を置くエンジニアリング企業で、自動車および内燃機関システムの開発と試験を行っている。

今回の評価試験に使用したのは、トヨタ自動車の「カムリ」シリーズに採用されている、直列4気筒2.5L直噴ガソリンエンジン「ダイナミックフォースエンジン」だ。トヨタによると、ダイナミックフォースエンジンは、ガソリンエンジン車では世界最高レベルの熱効率40%を達成しているという。

まず、代表的な点火方式の純正点火装置を使ってデータを収集し、その後、点火装置をTPSのナノ秒パルスパワー点火装置に交換して得られたデータと比較した。その結果、キャリブレーションのわずかな変更で、純正点火装置よりも正味燃料消費率(BSFC)が最大6%改善されることが分かった。

具体的な変更点はマルチパルス点火方式、排ガスを排気管から取り出して吸気管へ戻す外部EGR、スパークタイミングの最適化などだ。TPSの点火装置ではEGRを増加させても燃焼の低下は見られなかった。

さらに、TPSの点火装置では、空燃比30(λ > 2)を超える安定した動作が可能となり、マツダの「SKYACTIV-X」に見られるような超希薄燃焼を実現できる可能性があることが分かった。

また、TPSの点火装置の利点は、コストがかかるエンジン再設計や現行エンジンの構造置き換えを伴うような競合システムとは異なり、排ガスを再循環させるEGR、ガソリン直噴、ターボ過給、e-boostなど既存のエンジン設計や効率化技術とともに動作する点だ。既に、ガソリンエンジンや天然ガスエンジンのOEMのサイズ、コスト、性能指標を満たす可能性のある設計にしているという。

同社は、今回の試験結果に加え、点火装置のコスト削減、サイズ縮小、エネルギー消費量の削減が大きく進展しており、商用化が近づいていることを示しているとしている。

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