米海軍、海中から減圧プロセスなしで海面まで戻れる、新型ダイビングスーツを開発中

U.S. Navy photo by Ronnie Newsome

米海軍の海軍研究局(Office of Naval Research:ONR)は、2023年4月25日、新しい深海潜水服「Deep Sea Expeditionary with No Decompression(DSEND)」システムの性能テストを実施したと発表した。テストは模擬事故復旧ミッションの一環として行われ、DSENDを装着した米海軍のダイバーが巧みに泳ぎながら、人体を模したマネキンを発見したという。

海軍の潜水任務には、深海での船舶や航空機の引き揚げ、水中での救助、爆発物処理、船体メンテナンス、沈没した機器の回収などがある。しかし、水中深くに潜るほど、増加する水圧による危険は大きくなっていく。そこで、米海軍のダイバーは、ガスで加圧された潜水ベルを用いる飽和潜水システムを使用し、ベル内の圧力と外圧が一致するようにしている。

しかし、この方法には水面に戻る際、減圧症にならないようゆっくりと浮上し、一定の間隔で停止しなければならないという欠点がある。高気圧下で血液や組織に取り込まれた不活性ガスは、減圧とともに気泡化して、減圧症などの減圧障害を引き起こすことがあり、最悪の場合、死に至る可能性がある。そのため、ダイバーの潜水時間を短くする必要がある。

この課題を解決すべく開発されたDSENDは、自己完結型の生命維持装置を搭載しており、安定した圧力の「繭」でダイバーを包み込むため、ダイバーは何時間も深海で作業でき、長時間かかる減圧プロセスを経ずに浮上できるという。

DSENDは硬くて丈夫な素材で作られているが、軽量で動きやすく、人間の関節の自然な動きを反映する新素材を使用した関節部やグリッパーなどを備えているため、ダイバーの疲労を軽減する。ダイバーのサイズに合わせて調整することもでき、着脱も容易だという。

ONRのプログラムオフィサーであるSandra Chapman博士は、2024年中にDSENDをさらに発展させ、現実的な運用環境での海上デモンストレーションを実施したいとしている。

関連リンク

Deep Impact: New Diving Suit Could Increase Undersea Range of Navy Divers | Office of Naval Research

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