加工不要な木製品――MIT、植物細胞から木材を培養する実験

Image: Courtesy of the researchers

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、植物細胞から実験室で育てて作成する材料の特性を培養条件により制御できることを実証し、環境にやさしく廃棄物の少ない木材代替品を人工的に生産できる可能性を示した。研究の詳細は『Materials Today』誌に2022年5月25日付で公開されている。将来的には、特定の用途に適した特性や、初めから材料として完成品の形状を持つ植物性材料を培養できるかもしれない。

木材は古くから低コストで入手しやすい材料として広く利用されてきた。だが、世界では1年間にアイスランドと同面積の森林が失われており、このままでは100〜200年後に地球上の森林は消滅すると予測する研究者もいる。木材の入手が難しくなる一方で、環境面への配慮から化石燃料に変わる製品が求められており、木材など植物由来材料の需要が高まっている。

研究チームはこれまでに、ヒャクニチソウの葉から抽出した細胞を培養して組織状の植物性材料を実験室で生産することに成功している。細胞培養の際に、土や光は必要としない。植物細胞は液体培地で2日間培養した後にホルモンを含む固体培地で培養されるが、ホルモン濃度を調整することで、できあがる植物性材料の硬さや密度など物理的、機械的特性を調整できることが分かっている。

今回の研究では、ホルモン濃度が低いと細胞が丸みをおびた密度の低い材料となり、ホルモン濃度が高いと小さくて高密度の細胞構造を持つ植物性材料が育つことが明らかとなった。また、ホルモン濃度が高いほど植物性材料の木質化が進んでいることも分かった。

固体培地は、3Dプリンティング技術を使い、任意の形状で作成できる。その培地上で細胞培養することで、植物性材料を目的とする形状へと成長させることが可能だ。自然界には存在しない複雑な形状にできるため、材料として使用する際に木材のように成形過程で廃棄物が出ることもない。

今回の研究成果は、ヒャクニチソウというモデル植物を使用しており、木材代替材料を実験室で作るための研究としてはまだ初期段階だ。しかし研究チームは、実験室で栽培した植物材料と特定の特性に調整できることを示しており、将来的には家の壁を支える高強度の材料や効率的に部屋を温める熱特性を持つ材料など、特定の用途に特化した特徴を有する木材製品を栽培できるかもしれないと述べている。

関連リンク

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Physical, mechanical, and microstructural characterization of novel, 3D-printed, tunable, lab-grown plant materials generated from Zinnia elegans cell cultures

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