アト秒の時間分解X線分光法による有機薄膜太陽電池の光電変換初期過程を観測

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが、有機薄膜太陽電池(OPV)材料の光電変換において、光が当たった最初の瞬間に何が起こっているのかを調べる手法を開発した。X線パルスを用いた同手法により、光が当たってからわずかフェムト秒(1千兆分の1秒)の間に生じる光反応を観測することに成功した。

同研究成果は2022年6月14日、「Nature Communications」誌に掲載された。

OPVは、シリコン太陽電池に比べて安価で柔軟な材料で再生可能エネルギーを提供できるため、精力的に研究されている。光を電気に変換する初期の段階を理解することは、太陽電池の変換効率を高める上で重要な材料設計指針となる。

研究チームは、光電変換の最初の光が当たることで生じる物質内の光反応について調べた。まず、15フェムト秒の可視光のレーザーパルスを物質に照射し、光反応を開始させた。その後、フェムト秒のさらに1千分の1というアト秒のX線パルスを照射し、物質がどのように変化するのかを追跡した。

その結果、物質中を移動できる電子と正孔ペアが形成される初期状態についてX線分光法による初めての直接観測に成功した。初期状態は、電子と正孔ペアが物質中の分子鎖に非局在化しており、その後約50フェムト秒で、局在化した形態に変化することが分かった。

さらに、同研究に参加した英ニューカッスル大学のTom Penfold教授による計算も観測結果と一致した。以上の実験と計算結果から、研究チームは、初期状態が物質中の分子鎖間の距離に依存することを示した。

研究チームは、今回、OPVに光が当たった最初の瞬間を明らかにした。今後、OPVの効率が高い他の材料を組み合わせた場合における超高速ダイナミクスを調査する予定だ。

「われわれの時間分解X線分光法は今後、より幅広い材料に適用でき、効率の高いOPVデバイスの製造に必要な理解が得られるだろう」とインペリアル・カレッジ・ロンドンのJon Marangos教授は語った。

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