2D積層材料結晶格子のモアレ模様から、特異な材料特性変化を予測する手法を発見

結晶格子の干渉効果に起因するモアレパターンを用いて、非周期的な結晶構造やtwistronicsによる捩じれ結晶構造を再現した結果、原子配列の規則-不規則転移を通じて電気特性などの物理的性質が突然変化する、特異な転移現象を示すことが予測された。

米ユタ大学の研究チームが、2D状に積層された結晶において、一方の結晶格子を他方に対して回転したり引き延ばしたりすることで生じる多様なモアレパターンに対応した、多様な「捩じれ2層複合材料(twisted bilayer composite)」を設計した。回転角度の僅かな違いによって良導体から絶縁体に突然変化し、半導体のようなオン/オフ現象を示すなど、電気的や磁気的、熱的、光学的特性の制御に広く応用できる可能性がある。また、古典的な結晶と異なって周期性を持たない準結晶や、2層グラフェン層を互いに捩じることで超伝導特性を生じる「ツイストロニクス(twistronics)」など、新しく特異な材料分野の研究開発が促進されると期待される。研究成果が、2022年6月14日に『Communications Physics』に公開されている。

近年、従来の結晶学理論に当てはまらない新しい結晶材料が発見されている。1つは、古典的な結晶と異なり、秩序性は高いものの周期性(並進対称性)を持たない準結晶である。秩序性を持つ非周期的なパターンは、1000年以上前に設計されイスラム建築に用いられているギリ-タイルにも現われているが、1980年代初期に非周期原子構造を持つ結晶として、急冷されたAl-Mn合金が発見され、後にノーベル化学賞に結びついている。また、金網状に炭素原子が並んだ2Dグラフェンは、高い電気伝導度や優れた機械的性質などを持つことから、さまざまな応用開発が活発に展開されているが、近年2つのグラフェン層を積層して一方を少し回転すると超伝導を示すことが発見され、この2D材料の捩じれによる電子特性変化に関する研究分野はツイストロニクスと呼ばれている。

研究チームは、非周期的な結晶構造やツイストロニクスによる捩じれ結晶構造を、一方の結晶格子が他方に対して回転したり引き延ばされるときの干渉効果によって発生するモアレパターンを用いて、理論的に再現することにチャレンジした。その結果、捩じれ角度やスケールパラメータが変化するに従って、無数のマイクロ原子配置パターンが生成されることを見出した。

例えば、捩じれ角度やスケールパラメータの僅かな違いによって、良導体から絶縁体に急激かつ顕著に変化し、半導体におけるオン/オフ現象に類似した現象を示すなど、極めて特異で大きな材料特性変化を生じることを理論的に発見した。研究チームは、「この捩じれ2層複合材料における特異な転移現象は、量子伝導におけるアンダーソン局在転移に類似しているが、それとは異なりモアレパターンに起因した局在転移によるもので、驚くべき予想外の発見だ。捩じれ角度などの調節により、電気的や磁気的、熱的、光学的特性などの高精度な制御に広く応用できる」と、期待している。

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New, highly tunable composite materials—with a twist

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