超小型衛星「MAGNARO」を開発――複数の衛星をエンジンや燃料を用いずに軌道制御可能、実証実験実施へ 名古屋大学

名古屋大学は2022年8月23日、同大学大学院工学研究科の研究チームが、超小型衛星(キューブサット衛星)「MAGNARO」(MAGnetically separating NAno-satellite with Rotation for Orbit control)を開発したと発表した。

宇宙空間でのミッション遂行にあたり、複数の衛星を連携する「コンステレーション」や「フォーメーションフライト」といった編隊飛行を用いるケースが増加している。

これらの飛行においては、複数の衛星の相対位置を調節する軌道制御技術が求められる。一方で、小型衛星は電力やスペース、質量での制約が厳しいため、エンジンなどの軌道制御機器の搭載が難しいケースがあることが課題となっていた。

今回開発したMAGNARO(マグナロ)は、「MAGNARO–Tigris」と「MAGNARO–Pisics」で構成される。打ち上げ時は、磁気を用いて両衛星を接続する。

MAGNARO(MAGNARO-Tigris, MAGNARO–Piscis 結合時)

衛星に備えた磁気トルカ(電磁コイル)が地球磁場と作用することで、トルクが生じて姿勢がスピンする。衛星の機上で自律的に姿勢や軌道を決定し、適切に分離することで編隊を形成する。

さらに、軌道上にわずかに存在する空気分子と衛星が作用して空気抗力が生じ、姿勢制御で衛星の正面面積を変えることで空気抗力を調整し、編隊を維持する仕組みとなっている。

同衛星は2022年10月7日、エンジンや燃料を用いない軌道上実証実験として、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケット6号機により打ち上げられる予定となっている。

エンジンや燃料を使用しないことで衛星内のスペースに余裕が生じるため、小型の衛星にも望遠鏡などのミッション機器を搭載することが可能。また、燃料切れの心配がないため、宇宙空間でより長期間にわたって利用可能になるとみられる。

同衛星は、JAXAの革新的衛星技術実証3号機の実証テーマに選定されており、科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(育成型)「超小型衛星における回転分離を用いた編隊形成と宇宙実証機の研究開発」の支援を受けている。

MAGNAROの動作確認試験の様子

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