- 2024-2-5
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理化学研究所は2024年2月1日、東京大学などとの研究グループが超薄型有機太陽電池の耐水性を改善し、水中でも発電が可能な素子を開発したと発表した。将来のウェアラブル端末や発電する衣服などの開発につながる成果だとしている。
研究成果は同日、科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
研究グループは、陽極を構成する銀と発電層との界面に酸化銀を備えることで、陽極と発電層との間の界面接着を強化。耐水性と超柔軟性を兼ね備えた有機太陽電池を開発した。この太陽電池は厚さ3μmと超薄型で、水に4時間浸けた後もエネルギー変換効率を89%保持する。また、水中で30%の圧縮歪(ひず)みと復元を繰り返す機械的な変形を300回加えた後も、エネルギー変換効率の保持率が96%という高い安定性を示した。さらに、太陽電池を水中で浸けたまま光を当てて発電させる試験を行ったところ、連続して60分以上駆動した。
超薄型有機太陽電池は、柔軟性があり軽いため、ウェアラブルデバイスや衣服などへの装着が期待されている。しかし、これまでの超薄型有機太陽電池は水に弱いという課題があった。
従来の有機太陽電池には、陽極と発電層の間に発電層から陽極に効率的に正孔を輸送するための正孔輸送層があるが、この正孔輸送層が水に弱い原因だった。このため、研究グループは、陽極を構成する銀を酸化させると通常の銀よりも仕事関数が増加することに着目。陽極/発電層界面において銀を酸化させ、陽極と発電層との界面に酸化銀を備える構成とした。これによって、正孔輸送層を使わずに発電層から陽極に正孔を効率的に輸送できるようになった。
今回の超薄型有機太陽電池は、スマートウオッチなどのウェアラブルデバイスの電源としての活用が見込めるほか、衣服や布地にセンサーやマイクロチップなどを埋め込むe-テキスタイルへの応用が期待される。