次世代半導体にむけて超低比誘電率「アモルファス窒化ホウ素」を開発――電子デバイスの小型化を加速

韓国の蔚山科学技術大学校(UNIST)をはじめとする国際研究チームは、メモリやロジックLSIの小型化を促進する新しい材料「アモルファス窒化ホウ素(a-BN)」を開発した。極めて低い誘電率を持ち、高耐圧で拡散バリア特性にも優れ、次世代の半導体材料として期待できる。研究結果は、2020年6月24日付の『Nature』に掲載されている。

ロジックやメモリデバイスの微細化において、デバイスの高速応答性を保証し、性能を向上させるために、金属配線同士を分離する絶縁層の比誘電率(k)を下げることが求められている。具体的には、IRDS(International Roadmap for Devices and Systems)が、2028年までにk<2の誘電体の開発を推奨している。また、そうした材料には低比誘電率(Low-k)に加え、金属が半導体へ移動しないように拡散バリアとして機能すること、熱的、化学的、機械的に安定していることが必要だ。これまでにもLow-k材料は報告されているが、比誘電率は2を上回り、熱機械特性が不十分なため実用化に至っていない。

今回、UNISTをはじめサムスン電子技術院(SAIT)、EUプロジェクトのグラフェンフラッグシップに参加するスペインのICN2(Catalan Institute of Nanoscience and Nanotechnology)と英ケンブリッジ大の共同研究チームは、超低比誘電率(Ultra Low-k)で堅牢なa-BN薄膜の大規模合成に成功した。

研究チームは、誘導結合プラズマCVD法を用いて、シリコン基板上に厚さ3nmのa-BN薄膜を形成した。比誘電率は、動作周波数100kHzで1.78、1MHzで1.16と極めて低い値を示した。機械的、電気的にも堅牢で、絶縁破壊強さは7.3MV/cmと高く、厳しい条件下においても拡散バリア特性に優れていることも確認している。

「温度が最も重要なパラメータで、理想的なa-BN薄膜の生成には400℃が適していると発見した」と論文の筆頭著者であるSeokmo Hong氏は語る。NEXAFS(吸収端近傍X線吸収微細構造)の解析からは、ランダムな原子配置が誘電率を下げていることが分かった。また、ICN2のチームは、理論および数値計算からa-BN薄膜の構造と性質を説明している。

a-BN薄膜はウエハースケールで成長可能で、高性能デバイスの材料として非常に有望だ。グラフェンフラッグシップのMar Garc?a-Hern?ndezリーダーも「a-BNは優れた機械的特性、高密度、化学的および熱的安定性というUltra Low-k誘電体に求められるすべての要件をそろえているので、デバイスをもっと小さくできるようになるだろう」と、新素材の可能性に期待を寄せている。

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