広い電流レンジで電池の充放電電流を高精度に計測する、ダイヤモンド量子センサを開発 東工大ら

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東京工業大学は2022年9月7日、同大学工学院と矢崎総業による文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)のグループが、ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センタによる量子センサを開発したと発表した。世界で初めて、10mAの精度で-1000~+1000Aの電流を計測できることを実証した。

EV用電池は現在、電池の劣化や発火防止を目的に、実際の走行距離に寄与しない安全マージンが大きく設けられており、電池をマージンの分だけ余分に搭載している。この安全マージンにより、現状の(ホール式など)電流センサを用いた充放電電流積算によるSOC推定誤差が10%程度と大きい。しかし、広い電流レンジを持ちながらセンサの精度を向上できれば、安全マージンを減らすことができる。

また、将来のEVに向けた電池モニタリングには、1000A程度の電流を計測でき、十分な微小電流精度を有するセンサが必要となるため、SOC推定誤差を1%以下にできる精度(10mA)と、1000Aまでの大電流計測を両立できるEV用電池モニタリング向けセンサを目標に、ダイヤモンドNVセンタを用いた固体量子センサを研究開発していた。

(a)EVにおける電池モジュールおよび電流センサ実装イメージ
(b)EVにおける電池充放電マージンの現状と理想
(c)WLTC走行モードで想定される電流パターン
(d)電流センサ精度向上による効果

研究では、広い温度範囲で、スピンの共鳴周波数として複数物理量(研究では磁場と温度の同時計測)を高精度に検出できるダイヤモンド量子センサを開発した。Q-LEAP内の連携により、NVセンタを含有したダイヤモンド材料の作製技術、蛍光強度変化を高精度に周波数変換する信号処理技術、広い電流レンジでNVセンタの量子状態を操作するマイクロ波アンテナ技術、環境ノイズ低減のための差動型センサ技術等を構築。世界で初めて、広い温度範囲で、-1000~+1000Aの電流を10mAの精度で計測できることを実証した。

NVセンタ含有ダイヤモンド材料技術では、人工合成ダイヤモンド単結晶をベースにNVセンタを形成した。センサの信号処理技術では、電流に伴う磁場変化による蛍光強度変化(アナログ信号)を周波数変化量としてデジタル信号に変換、フィードバック制御し、高精度で広い電流レンジを実現。マイクロ波印加用アンテナは、広帯域化している。

ダイヤモンドセンサヘッドにこれらの技術を適用し、バスバの表裏に設置。共通の外部磁気ノイズはキャンセルしながら、バスバ電流による磁気変化だけを捕える差動型センサを構築した。

(a)ダイヤモンドを光ファイバの先端に設けたセンサヘッド構造 (b)バスバ(電流経路)の表裏にセンサヘッドを設けた差動型センサの構成図 (c)同写真

EV搭載用電池の充放電試験装置にて、開発した電流センサを評価したところ、電流応答出力(周波数変化)が10mA~1000Aという極めて広いレンジで得られた。さらに、誤差範囲が全域にわたり10mA以下に収まることがわかった。これは、WLTC走行パターンでの電池のSOC推定誤差を1%以下にできることを示している。

(a)バスバ充放電電流(入力電流)に対するセンサ出力(周波数)変化の計測結果
(b)バスバ充放電電流(入力電流)に対する電流精度、温度依存性

現状では、EV搭載電池のモニタリングに今回開発した技術を応用することで、充放電の安全マージンを1桁低減し、1%まで抑えることができるため、走行距離を維持しながら、搭載電池容量を10%削減できる。これにより、製造時のCO2削減、EV軽量化による電費向上が期待できる。

実用化に向けて今後、ダイヤモンド量子センサの高感度化と小型化技術を開発し、バッテリーマネージメントシステムに組み込んでいく。さらに、開発したダイヤモンド量子センサを活用し、高い精度で電池内部の電流や温度分布を計測し、電池を高信頼化していく。

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